注:このページは受賞当時のページ(国土庁)を復元したものです
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ご意見・お問い合わせ先
国土庁大都市圏整備局計画課 社会活動班 山本、久保田、都築
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インターネットを活用した私の在宅型スモールビジネス・アイデアコンテスト
入 賞 作 品 集
最優秀賞(国土庁長官賞) 志賀 智子
副題:主婦ボランティアネットワークを生かしたライフサポートビジネスの提案
1.女性による新たなネットワークの生成
私は、都内在住の子供を持つ30代の主婦である。結婚後ここに越してきたが、マンション暮らしで知人もほとんどなく、夫の会社の帰りは遅い、実家も頼れないという中で、出産後体調をくずし鬱々とした日々を送っていた。子供と家の中で向き合うだけの生活は耐え難く、子育てに関してさまざまな情報を得たいという気持ちが募っていた。そこで区が主催した子供の教育問題の講座に参加し、そこに参加していた全く見ず知らずの主婦に呼びかけるかたちで相互扶助を目的とした子育てグループ(*1)を作り、現在まで活動を続けている。メンバーは幼児を持つ母親達でほとんどが専業主婦である。子育ての悩みを相互に解決しあうことを目的とした会報の発行と育児の専門家の講演会、救急法・介護法などを学ぶ講習会などを企画開催している。
相互に扶助しあうという目的で活動が広がっていくにつれて、興味深いことが起こった。何人かが打ち合わせで集まる。すると自然に活気が生まれる、意見が活発に出てさまざまなアイデアが湧いてくる。例えば、母親が勉強をしようとすると、乳幼児は託児を必要とする。ベビーシッター会社に依頼することもあるが、度重なると経済的負担も大きい。そこで、会場で相互に子供をあずけあう相互託児と勉強を両立する方法を考える。そのためにはメンバーが早番、遅番のシフトを組み、子供の多い人は遅番で朝もゆっくり出てこられるようにして負担を減らす、万一に備え保険をかける、など意見が出される。さらには、インターネットでデータをやり取りする際に夫をも巻き込むことで、家族ぐるみのネットワークが生まれようとしている。そうしているうちにメンバーから、「このネットワークから力をもらい、自分がパワーを発揮できることに充実感を感じる」という声が聞かれるようになった。これは思っても見なかったことだった。
このネットワークには3つの特徴があげられる。第一に、ネットワークが、学校や仕事や趣味などから生まれるのではなく、身近な境遇や悩みをきっかけとして生成してきている点である。
生まれたところも、育ったところも、年齢も、職業も異なる多くの女性が、同じ地域で同年代の子どもを持つというだけで、幼稚園や学校といった既成の集団以外でこうしてつながっている。男性は、仕事に忙殺され時間的余裕がないためか、又さまざまな肩書きに縛られているせいか、同年代の子どもがいるからといってこうしたつながりはできないような気がする。主婦は学歴、職場、地位などさまざまなものをはぎとられているからフットワークが軽いのである。
第二にインターネットやSOHOといったビジネス分野のネットワークとは最も縁遠いところにいる主婦達、いわばネットワーク弱者というべき周縁に存在する層から新しいネットワークが生まれてきているという点だ。
第三に、そのつながりの根底に、一人の人間が組織に自発的に関わりネットワークを創造していくことに喜びを見出している点がある。
以上をまとめるならば、経済性や利害関係とは別個の価値観によってつながれているネットワークであり、相互扶助による共感に基づく新たな連帯の動きと言えるのではないか。
こうした萌芽は、今ふつふつと各地で生まれ始めていると考えられる。子育てグループの全国的な広がりはもちろんのこと、ある程度経済力もある高齢の独身女性や、夫に先立たれ遺産は多少あるものの将来に不安を覚える女性が共同で生活を始める、阪神大震災がきっかけとなって、避難所で知り合いとなった人達が食事などを共にする共同生活を営むコレクティブハウス(*2)に住む、不登校の学生達が自分達でネットワークを作り、勉強したり同世代との交流を行うなどといったことはその例と言えよう。いずれも、従来にないネットワークの形態である。こうした動きは静かに広がりをみせ、将来には、子供達の教育すら公的な機関に頼らずボランティアで行う母親達のネットワークや65才以上の元気な高齢者だけによるホスピスでのケア活動、なども行われるようになるかもしれない。
2.女性による新たなネットワークの背景にあるもの
なぜ、こうした新たな連帯の動きが生まれてきたのだろう。経済性をひたすら追い求めてきた日本は、現在閉塞状況に陥っている。現代社会に噴出するさまざまな問題の多くは、家庭も社会も常に何かに追われ、ゆとりが欠如していることに原因があると考えられる。父親は仕事に追われいらいらし、母親は父親不在で子供の教育に常に不安を抱え、その家庭の雰囲気を敏感に察する子供の中には、不登校や暴力に走る子も増えている。家にはもう買うものはないほどに物があふれているのに、それでもなお消費を煽り立てるメーカー、官僚の腐敗、銀行・証券など金融にまつわる汚職、倒産、子供達の暴力で荒れる学校、日本はどこまでいくのだろう。今までの経済効率優先、拝金主義、学歴偏差値重視、など旧世代のパラダイムは行き詰まりの様相を呈している。この日本に住むことの息苦しさをとりわけ肌で敏感に感じているのは、子供を産み育てる母親であり子供達であると思う。男性は社会人としては根本的な矛盾を感じつつも、自分達が組織の一員であり、その組織が間接的にせよそうした矛盾のサイクルの中に組み込まれており、批判はできないというダブルバインドの状態に陥っている。専業主婦は夫の扶養を受けていて経済的に自立していないという批判はあるが、逆に主婦である女性の強みはそういった組織のしがらみから自由であるという点である。そうした「身軽さ」のの陰で、社会の行き詰まりを本能的に感じ、無意識のうちにしなやかな連帯によって生活を防衛しようとし始めているのではないか、と考えられる。女性による新しいネットワークの形成こそ、現在の閉塞状況を切り拓く新しい価値観を示唆するものではないだろうか。
3.ボランティアネットワークが生み出す「相互扶助」という力
女性によるしなやかな連帯は、現代社会に新しい意味での「相互扶助」という価値観を示していると考えられる。「相互扶助」といってもかつての「ムラ」に見られるような自然発生的な「相互扶助」ではなく、個人が自ら選び取る自律的な行為であることが特徴である。かつて農作業は個人の力でできるものではなく、共同作業を基本としていたから、「相互扶助」によって「ムラ」が成り立っていた。その共同体に属する以上、「相互扶助」の関係は生まれた時から存在していた。敗戦後、高度成長期に核家族化が進行し、都市においては「相互扶助」という関係が急速に薄れていき、現在では一部を除き既成の集団にその関係を見出すことは難しい。
個人が自ら選び取る「相互扶助」の関係は、ボランティアネットワークから生まれると考えられる。この場合ボランティアは、慈善事業や単に無償の行為といった狭義の意味ではなく、「ボランティアとは、何らかの困難を抱えている人を前にした時、その人の問題を自分から切り離すのではなく、その人の問題は、ある意味で自分の問題でもあるとういう結びつきを見て取るという事態への関わり方をした上で、その状況の改善に向けてネットワークを作ってゆくネットワーカーである」(慶応義塾大学金子郁容教授)(*3)という意味である。
ボランティア活動は、始めた時は人に何かを与えるつもりであったものが、気がつくと与えたはずの人から何かを与えられているということが起こるという。確かにこれは体験した人でなければわかりにくいが、私達の子育てネットワークメンバーの「力をもらっている」という言葉が示すように事実であると思う。
「与え与えられる関係」すなわち「相互扶助」の関係は、パソコン通信における「発言し、未知の人からコメントがつき、又そこから発展したコメントが展開していく」というような新しいネットワーク社会でもダイナミックに見られる現象である。しかし、パソコン通信の世界のようなサイバースペース上からはるか離れた、リアルな世界のボランティアネットワークにも存在する。そして同じくサイバースペース上から最も遠く離れたローカルな主婦達から連帯が始まっていることは極めて興味深い。ボランティアネットワークが生み出す「相互扶助」の関係により女性はエンパワーされるという構造がそこに存在するのではないか。
4.女性のボランティアネットワークによるビジネスの可能性
こうして引き出された女性の力を収束しビジネスの世界に活用できないだろうか、又新しい女性の働き方の創出につなげられないだろうか。
現在の専業主婦を労働力の観点から考えてみる。マクロで見た場合、今後超高齢化・少子化による労働力人口の減少をきっかけとして、専業主婦層が労働力市場に呼び込まれていくことは大きな流れとしてとめられないだろう。今後男性も、終身雇用、年功序列がくずれ、会社の肩書きではなしに個人としての専門性が要求される欧米並みの厳しい時代に入っていく。女性の再就職を考えた場合、専門技術のある人は技術を生かした雇用の場があろうが、例えば出産以前事務系の仕事をしていたような場合、現在の男性優位社会に再就職し、経済状況に応じて調節可能な労働力、パートタイマーとして雇用されることが、個人にとって家庭にとって利益になることだろうか。今後女性の子育て後の再就職あるいは、子育てと仕事を両立し続けられる働き方に新しい形が生まれてくることが必要である。その観点からも、女性が力をそこから得ているボランティアネットワークを基盤としたビジネスの可能性を以下で提案したい。そのための有効なツールとしてインターネットの存在意義は大きい。
5.子育てと高齢者をサポートするシステム(ライフサポートシステム)とは
そのビジネスの一例として、私はインターネットを利用した子育てと高齢者をサポートするシステムを提案したい。それを仮に「ライフサポートシステム」と呼ぶことにする。それは、行政と民間ビジネスの両者に対してサービスを受ける側に立ってエージェントの役割を果たすものである。
ライフサポートシステムの中味は以下の通りである。
・地域に密着した子育て・高齢者サービスのパーソナルな情報提供
・ボランティアスタッフ(有償)によるベビーシッターやホームヘルパーの派遣など
ネットワークマネジメント
地域に密着した子育て・高齢者サービスのパーソナルな情報提供とは
今後の超高齢化・少子化の進展で、行政サービスへの関心とニーズは高まり、選択肢も増える。しかし数々のサービスがあっても、縦割り行政のため、欲しい情報が一ヶ所では手に入らないことも多い。行政はサービスをあまり宣伝しないし、基本的に自己申告制なので自分から声をあげなければ親切に教えてくれることはない。さまざまな介護のハウツー本に、「あらかじめ地方自治体がどのような公的サービスを用意しているか調べておくように」と書いてあるが、現実は乳幼児を抱えていたり、高齢者になれば、まして一人暮らしであれば調べるのさえおっくうになりがち又は困難である。
窓口の一本化など行政の改革を強く期待したいが、それを待っていては一生が終わってしまうだろう。既成資源の有効活用の点からも、サービスを受ける側に立った必要な情報を提供するエージェント的な組織が必要となるだろう。加えて今後公共サービスは財源の問題から制約が多く、個人も行政におんぶにだっことはいかず、自助努力が要請される社会がそこまで来ている。超高齢化社会、少子化の進展で介護や福祉・子育てのビジネスにさまざまな業種が参入し、ソーシャルサービスが市場として急激に拡大をしていく。その多種多様なサービスの中には、民間であるがゆえに玉石混淆、質の悪いものも当然でてくる。その中から、良いものを選び出す情報力も今後個人に欠かせないものになってくるだろう。
どれがその人にとって必要なのか、何が必要とされているのかをサービスの提供主体が官であるか民であるかを問わず利用者に合わせてコーディネートしパーソナルに情報提供するシステムである。子育てそしてゆくゆくは高齢者に関するあらゆるサービス情報をデータベースに集約しサポートするシステムを構築したいと思っている。具体的には子育て情報に関しては、地域の母親の人的ネットワークを利用して子育てに必要な情報のアイテムを調査し、地域に根差した子育てに関する医療・保健、公的サービス、教育、民間サービスのデーターベースを作る、それを有償で会員に提供する。高齢者についても公的サービス・民間サービスの情報を提供する。提供方法は、FAX、メール、電話などを活用する。
ボランティアスタッフ(有償)によるベビーシッターやホームヘルパーの派遣など
ネットワークマネジメントとは
第二に子育てのベビーシッターやホームヘルパー(有償ボランティアスタッフの活用)のネットワークを作り、派遣を効率的に行う。必要な人のところへ必要な時にタイムリーに派遣できることで、顔の見える地域密着ビジネスをめざす。
■インターネットをどのように利用するのか
インターネットのホームページ上に子育て・高齢者サービスの情報を蓄えたデータベースを置き、会員登録をしたユーザーは必要に応じて検索ができるようにし、又パソコンなどの端末を持たないユーザーへはFAX、電話等で情報提供する。データベースが地域に密着したものであること、又個人情報のプライバシー性を勘案し会員制のサービスとする。PDAやモバイルコンピューターで接続し、外出先からアクセスを可能にする。将来はボランティアスタッフにも端末を持たせ、メールなどで仕事の指示を連絡する体制にする。
■既成の民間のサービスとどう違うのか
民間のサービスは営利目的である。私の考える会社は、会社でありながら非営利の団体(Non Profit Organization)に近い。私は、このNPOと民間企業の中間の形態を考えている。すなわちビジネスとしては企業だが、主婦の人的ネットワークを活用するという点でNPOに近いということである。きめこまかな情報サービス提供をすることを目的としている。社員は極力減らし、主婦のネットワークを生かし、ボランティアの力を引き出すようなシステムにする。
■ボランティアに頼っていて事業が成り立つのか
現在、主婦の再就職は専門技術のある人は別として不況も手伝って依然厳しいものがある。主婦が家庭から一足飛びに社会へ出るその橋渡しをするシステムとしても機能する。ボランティアといっても、無償ではない、有償による派遣である。
■立ち上げや運転資金はどこから調達するのか
資金は会員からの会費の徴収、企業からの広告料、資金融資団体などからの融資、などによって賄う。
■必要な機器環境は
インターネットサーバーとなるコンピューターより常時接続整備された高速通信回線、ルーター及びモデム、プリンター、FAX、モバイル端末。
■仕事と家庭の両立
両立のためオフィスは家庭内に当初設け、その後職住近接へと移行したい。インターネットでボランティアスタッフを結ぶことで、効率的な労働、労働時間の短縮、フレキシブルな働き方へ対応し、家庭と仕事の両立がはかれるものとする。
6.望まれる通信端末の操作性の向上と自治体・企業の協力
家庭におけるパソコンの普及率は約2割であるという。私の実感としては、主婦にとってはまだインターネットというのはごく一部の人を除き「インターネットで一体何をするの?」という感覚である。私の周囲を見る限り、主婦が電話のかわりにメールを使ったり、インターネット通販を利用して日常の買い物をしたりというレベルにはいたっていない。主婦にとってホームバンキングなどは便利だとは思うが、セキュリティの問題がネックなのか現実的に普及しているとは言い難い。主婦は極めて現実的である。それゆえに自分にとって役に立ちかつ安価でテレビ並みに操作が簡単であれば普及することは確実である。携帯できればなお良い。こうした従来のパソコンのイメージを離れた電化製品並みの端末の開発が待たれる。特にお年寄りなどには、画面が大きくクリアでタッチパネルや音声ガイドのついた端末などが必要だろう。現在のインターネットは、一部の人にとっては極めて有用であろうが、主婦にとっては電話には及ばない未知のツールでしかないと私は思っている。しかし、使い勝手の良いものになれば、人と人をつなぐ強力ツールとなり得るものだ。そのために、コンピュータ産業や周辺機器産業にこのような環境整備を期待したい。
又、こうしたビジネスの展開にあたって地方公共団体、学童保育、保育園、幼稚園、学校、児童館などさまざまな幼児・児童に関わる施設の同意と協力が得られることが必要であり、データベースの基本情報となる生活関連産業からの情報提供に関する協力が不可欠である。
7.ゆとりある未来のために
ある日、雑誌に目を通していた私に言葉が目に飛び込んできた。それは、「インターネットのあるキャンパス」(*4)と題した記事の中の、慶応義塾大学環境情報学部の熊坂賢次教授が提唱された「粒子家族」「携帯家族」という言葉だった。教授によれば、1975年以降「核家族」は消失し、現代は個人が個室に閉じこもり自閉的なニーズを豊かさで満たす「粒子家族」となっている。今後登場するであろう新しい家族像は「携帯家族」である。家というハコモノの中に家族が存在するのではなく、「つながっている」関係、それはあたかも携帯電話を持ち歩くように、離れていてもインターネットなどの手段を使いネットワークで結ばれる家族のことだという。「携帯家族」とはやや異質な言葉だが、私は「粒子家族」というのは、大気中に漂流する塵にも似て、まさに現代家族の姿を見事に言い当てていると感じた。それは、この東京に住み、未来に対するいいようのない不安に満ちて子育てをしている自分自身の心象風景に合致していたからかもしれない。
「携帯家族」が出現するのかどうか、それは私にはわからない。しかし、21世紀初頭の社会を作るのは、私達若い世代とその子供達であることは間違いがない、旧世代のパラダイムから解放され、ゆとりある新しい社会を開くきっかけを作るのは、「組織」にとらわれることなく「個人」として自律的に社会と関わろうと連帯し始めた女性達である気がしてならない。女性が変わり、男性が変わり、そして社会が変わる。男女がともに協力し、ゆとりと希望に満ちた社会を次代に継承していくことを切に希望してやまない。
注)
*1)現在子育てグループは正確な数はつかめていないが、全国各地に多数存在する。行政でも子育てグループの果たす役割は
認めており、区なども積極的にグループ作りの支援を施策に盛り込んでいるところが多い。中でも母親が子育て情報誌を
発行することは活発で、ノートの回覧や手書きのコピーといった方法をとるところから、書店の流通ルートに載る本を発
行したり会社まで設立する本格的なものも存在する。
*2)新しい集合住宅の形態。独立した複数の住戸とリビング、ダイニング、キッチン、ランドリー、工作室などの共用空間を
組み込んだもの。炊事や建物の補修なども居住者自ら共同で行う。北欧では公共住宅として供給されており、共働き、単
身者、高齢者の生活にとっても好ましい集合住宅と評価されている。
*3)「ボランティア もう一つの情報社会」金子郁容 岩波新書 1992年
*4)「インターネットマガジン」 株式会社インプレス 1997年12月号
熊坂教授のホームページ http://wise.gel.sfc.keio.ac.jp
優 秀 賞(国土庁大都市圏整備局長賞) 石井 希世子
副題:仕事と子育ての両立を模索するなかで見えてきた仕事
出産・育児と仕事の両立のために選んだ「SOHO」
●出産・育児と会社経営のジレンマ
私が高齢出産でようやく子どもを得たのは39歳のとき。仕事にかまけて、出産適齢期をはるかに過ぎてしまったのです。生まれてきた小さな命に、夫と共に最大級の喜びをわかちあったのですが、その途方もない幸せとは別に、仕事のほうでは大きな悩みをかかえていました。
私は30代の初め頃から小さな編集プロダクションを共同経営していました。その共同経営者がクライアントの出版社に引き抜かれて去ってしまい、経営がすべて私の肩にかかってきていたのです。若いスタッフ4人が働く編集プロダクションの経営は、生まれたばかりの赤ん坊をかかえる私の手に余るものでした。予定日直前まで埼玉県浦和の自宅から東京・渋谷にあるオフィスまで通い、臨月のおなかをコートで隠しながら最終電車で帰宅する毎日でした。産後は数週間で職場に復帰しました。仕事のメインはパソコン通信をテーマにした月刊雑誌の企画・編集で、編集の仕事それ自体は家でもできるのです。パソコンと通信回線さえあれば、原稿の受け渡しも編集作業もできるわけですから。しかし経営となるとお手上げです。スタッフを引き連れて飲み歩き、悩みの相談にのったり愚痴を聞いたりということができません。クライアントとの複雑な交渉も、発注先の開拓も無理です。核家族で夫と二人、綱渡りするように乳飲み子を育てていたのですから。
●ネットワークカンパニーとして再出発
さまざまな無理が重なって頂点に達したとき、私は頭が壊れるほど悩んだあげく、会社をたたむ決心をしました。たたむといっても破棄するというのではなく、スタッフにはクライアントの会社に移籍してもらい、私ひとりでゼロから出発しようという決心です。それまでの仕事は全て失うことになりますが、なんとかなるさと腹をくくりました。
渋谷のオフィスを引き払って浦和の自宅にパソコンやモデムや電話回線を移し、「ネットワーク・カンパニー」として再出発しました。ネットワーク・カンパニーとは、当時私が雑誌で担当していた連載記事の著者の提言で、電子ネットワーク上に構築される会社のことです。いまでいう、SOHOと同じ意味で私はとらえていました。
●「オンライン雑誌」の発行
ネットワーク・カンパニーとしての最初の仕事として夢に描いたのは、紙媒体で出していた雑誌を、パソコン通信ネットワークで発行できたらというものでした。最初は夢でしかなかったのですが、力を貸してくださる方々が現れ、『オンラインジャーナル』というパソコン通信のオンライン情報誌が産声を上げました。生まれた子どもが1歳を過ぎた、1994年6月のことです。
このオンライン雑誌は、制作するオフィスの場所を選びません。私は東京まで通う必要はなく、自宅ですべての作業をすませることができました。企画は電子会議室で、執筆依頼や原稿受領は電子メールで、発行は電子ネットワークへの登録で。
●母子関係の修復と人間らしい生活
在宅での仕事に切り替えることにより、私は「人間らしい生活」を取り戻すことができていました。東京のオフィスへ通っていた頃は不毛な人間関係に苦しみ、遠く子どもを案じながら徹夜仕事をし..というふうでしたが、在宅ワークではそんな悩みはいっさいナシ、なのです。たとえ徹夜仕事があっても、子どもを寝かしつけてからパソコンに向かえばいいので、その安心感といったらありません。オフィスへ通っていた頃は、毎月訪れる仕事の極期10日ほどは、実家の母に手伝いに来てもらっていたのです。ゼロ歳だった子どもは祖母と私の区別がつかず不安におちいったり、仕事の悩みでカリカリしている私よりも祖母になつくなど、仕事に追われる私と子どもの関係は危険がいっぱいの状態でした。
それが、家で仕事をするようになってからは、母に手伝いに来てもらわなくてもすむようになり、私と子どもの関係はとても安定したものになりました。実家の父も母の不在を嘆かなくてよくなり、2つの家族の危機が回避されたのではないかと思います。
パソコン通信のオンライン情報誌からインターネットへ
●仕事の基盤となったネットワークのタウン情報誌
しかし、1分10円でユーザーの購読に頼る『オンラインジャーナル』の発行だけでは安定した収入は得られません。ネットワーク・カンパニーとしての仕事の経済的基盤となったのは、あるパソコン通信ネットワーク会社のオンライン広報誌の受注でした。
パソコン通信ネットにはさまざまな電子会議室があり、多くのメッセージが書き込まれています。百数十もあるそれらの電子会議室は、紙媒体には載らない貴重な情報が続々と書き込まれていたり、日本各地から集まった人々の楽しい社交場となっていたり、あるいはシリアスな恋愛ドラマが演じられていたり、じつに多種多様な使われ方をしています。
ネットに新しく参加した人がそれらの中から自分に合った会議室を選び出すのは至難のことですし、古くからいる会員でも自分が参加している以外の会議室の様子はなかなか知る機会は少ないものです。そこで、たくさんの電子会議室をウォッチングして、そこで起こっていることを知らせるオンライン情報誌のニーズが出てくるわけです。紙媒体で言えば地域のタウン誌のようなものですね。
このオンライン情報誌の提案は、パソコン通信専門誌の編集をしていた私のキャリアも功を奏して、担当者に認めていただき、受注仕事として契約することができました。
●取材も原稿受け渡しも発行もすべて電子ネットワークで
多くの電子会議室のウォッチングは一人ではできません。つきあいのあるライターの方々にメールを出し、ウォッチングのエリアを分担して執筆依頼をすることから仕事は始まりました。各地にいるライターからメールで原稿を受け取り、オンラインで読みやすいように編集加工し、通信ネットワークのメニューに登録する。記事の企画や番組表作成、取材依頼、進行チェックなどと合わせ、それが編集者としての私の仕事になります。パソコンと通信回線があれば、すべて家ですませることができます。
この雑誌にはウォッチングだけでなく、電子会議室を主宰する方のインタビュー記事なども織り込むのですが、その場合も、取材申し込みから実際のインタビュー、写真データの受け渡しまで、すべてパソコン通信ネットワークを使って行います。家から一歩も出ずに、遠隔地にいる人のインタビュー記事ができてしまうわけです。
●オンライン情報誌の仕事の拡張
このオンライン情報誌はスタートしてから足かけ4年ほどになりますが、紆余曲折を経ながら、成長・拡大してきています。まず、最初に契約してくれた会社だけでなく、もう1つ契約先が増え、現在は2つの通信ネットのオンライン情報誌を制作しています。1つは巨大ネット、もう1つは中堅ネットで、それぞれのネットの特質にあった編集のくふうをしています。巨大ネットでは、双方向ボードを設けてユーザーからの情報を吸収することを重視し、中堅ネットでは、ウォッチングを濃厚に展開してメッセージの書き手を支援する方針をとっています。
さて、ここ1年ほどの新しい動きとして、2つの契約会社ともインターネットに力を入れ始め、私どもの手がける情報誌もインターネット版が必要になってきたということがあります。このインターネット版の編集には、まったく別の工夫が必要になりました。
●インターネット・コンテンツの紹介
パソコン通信ネットワークのサービスは、双方向の電子会議室がメインですが、インターネットでは、ウェブで提供するさまざまなマルチメディア・コンテンツがサービスのメインになっています。このコンテンツをどう紹介するかが、知恵の絞りどころです。
すでに「ホワッツ・ニュウ」と呼ばれるコンテンツの新着紹介記事はどこにでも置かれています。それと同じことをしても必要とは認めてもらえません。そこで考えたのは、男性ユーザーをメインターゲットに作られているインターネットのコンテンツを、女性の視点でみたらどう見えるか、ということでした。同じ女性でも、独身で遊び盛りの女性、仕事一筋の女性、家庭と仕事を両立させようと必死の女性では見え方が違うはず。
そう考えて、まずその3つのキャラクターを作り、彼女たちにコンテンツの感想を勝手に喋らせる、という手法の記事を作りました。もちろん、圧倒的多数である男性ユーザーは大切にしなくてはなりません。こちらは男性ライターに頼んで、いくつかのキャラクターを作り出してもらいました。こうして、それぞれ年齢も性格もライフステージも違う、つまり情報ニーズがさまざまに異なる男女のキャラクターが十数人、誕生しました。
このキャラクターが数人集まって、それぞれの視点から見たコンテンツの感想を喋り合う、というスタイルの記事で、インターネット版のオンライン情報誌は作成しています。そのキャラクターの喋る言葉には、実際にライターがそのキャラクターに成り代わり、その立場で見て・聞いて体験したコンテンツの評価・感想を織り込んでいるわけです。
子育てママ・パパのインターネット・ガイド誌構想
●新しいインターネット・ガイドの提案
このオンライン広報誌の手法を使って、広くインターネットのガイド・サービスができないだろうかというアイディアをもっています。
いまインターネットには、さまざまな検索エンジンが活躍しています。それはテーマやキーワードによってコンテンツを検索してくれますが、インターネットをさらに使い勝手よく楽しむためには、「ぬくもりをもった人の目」でガイドするサービスがあっていいのではないでしょうか。年齢や性格、ライフステージが異なる多様な男女のキャラクターを設定し、そのキャラクターの目で、多様なコンテンツをふるいにかけ、ガイドするわけです。あるいは女性専門のオンライン・ガイド誌というのも考えられるでしょうし、さらに特化して、子育て中のママ・パパのためのインターネット・ガイド誌なども楽しいものができるのではないでしょうか。
いろいろな地域で子育て中のママが集まって、子連れママに優しい地域のガイド誌を作っていますよね。また、やはり子育てママが子どものためのエデュティメントソフトを実際に使って評価したムック本なども出ていますね。私はどちらも大好きで目につけば買って読み、重宝しています。その編集視点がぴったりきます。
インターネット・ガイド誌と書きましたが、ガイドとはつまり「編集」に似ています。子育てママのインターネットガイド誌とは、つまるところ「子育てママ」という編集視点で、よきコンテンツを選び、インターネットの目次を作ることなのですね。ワン・クリックで、そのコンテンツへ飛んでしまうのですから。
●子育てママ・パパのインターネット・ガイド誌構想
さまざまに特化したオンラインガイド誌が考えられるわけですが、私がいちばん身近に感じられる「子育て中のママ・パパのためのインターネット・ガイド誌」を例として、実現のために必要な要素を考えてみます。
まず、ウォッチング・ライターが必要です。実際に子育て中のママ・パパで、インターネット環境にあり、読み書きが好きな人が理想でしょうか。自分自身の関心を大事にし、既存の検索エンジンをフル活用してさまざまなコンテンツを見て歩き、評価できるものをセレクトして記事を書いてもらいます。
ライターがそれぞれの視点で書き上げる記事を、面白く興味深い読み物として編集加工・分類・登録する編集者も必要です。更新は毎日が理想ですね。情報内容としては、子育てに役立つサイト情報を核に、ママパパの息抜き情報などもアレンジします。
遊び場情報や医療情報、保育園・幼稚園情報など、実際に生活する地域情報が大切ですから、コンテンツの分類軸には「地域」軸も必要になるでしょう。壮大な話になってしまいますが、ゆくゆくは全国紙の「地方版」に類する想定も必要になりそうです。
そうしたコンテンツ情報にくわえて、ユーザーが双方向で情報交換やコミュニケーションを楽しむ掲示板も欲しいですね。その掲示板を上手にリードするボードリーダーも必要になります。
●広告を収入源として事業化
どう事業化するかですが、ユーザーから利用料金を取る有料コンテンツとするよりも、広告営業を考えるのがいいと思います。それにはもちろん、子育て中のママパパにとってほんとうに必要なインターネット・コンテンツの目次があり、交流の場があり、たくさんのユーザーが集まってくるという、広告主にとって魅力的な出稿先になるのが条件です。
この事業が実現すれば、ライティングも編集もデザインも、つまり全ての作業を、SOHOをネットワークすることで可能です(広告営業だけは例外で、やはり実際に出向く必要がありますね)。子育て中でフルタイム勤務が難しいという女性のパワーを引き出し、十二分に活かす仕事を創出するに違いありません。
インターネットの双方向性を活かす「パーソナリティ」の仕事の開拓
●インターネット掲示板の豊かな表現力
ネットワーク・カンパニーとしての当社の経済的支柱は、オンライン広報誌受注の他、インターネットの双方向エリア(ユーザーが書き込みできる掲示板が集合したエリア)を運営する仕事の受注がありました。そのエリアは、あるソフト会社のグループウェアの特性をアピールするために設けられたもので、パソコン通信の電子会議室のようにユーザーが自由に読み書きできます。パソコン通信と異なるのは、文字に色を付けたり、文字のサイズを自在に変えたり、ある言葉をクリックするとポップアップするコメントがつけられたり、画像や音や表を張り付けたりが自由にできることです。コメントツリーもビジュアルに表現されます。
インターネット掲示板の普及・レベルアップはこれからだと思いますが、その表現力の豊かさということでは、パソコン通信のはるか上をいくことは間違いありません。ネックは、ダウンロードに時間がかかることでしょうか。しかしそれもいずれ解決されていくでしょう。
●インターネット掲示板の運営という仕事
当社が運営する双方向エリアは、「映画」「音楽」「本」「子育て」「食」などのテーマをもった掲示板(ボード)の集合体で、それぞれのボードにボードリーダーがいます。「子育て」なら育児というテーマに沿って新鮮な話題を書き込み、ユーザーの発言(メッセージ)を引き出し、その発言にレスポンスをつけて、話題を展開していきます。
テーマに沿った話題を硬軟取り混ぜて毎日提供し、ユーザーの声を引き出し会話を発展させていくというワザは、視聴者参加番組を仕切るラジオのパーソナリティに似たところがあります。熱意と才能があるボードリーダーがいるところは多くの人が集まってにぎわい、そうでないところは閑散とするというように「視聴率」もシビアです。
このボードリーダーの仕事は、インターネットの掲示板が普及するにつれて、ひとつの職能として発展していくのではないかと思います。そしてこれもまた、インターネット環境さえあれば、家庭にいる女性が在宅でできる仕事なのです。
●企業のホームページに双方向ボードの設置を
私どもが手がけているのは、グループウェアの特性のアピールという目的をもった双方向エリアですが、もっといろいろな企業のサイトに掲示板を置くことを勧めたいと思います。たとえばファミリーレストランのホームページ。ただ広報のための情報が並ぶだけでなく、しっかりしたボードリーダーがいる一般掲示板を設けたらどうでしょう。
ボードリーダーは広く「食」をテーマにさまざまな話題を書き込んでユーザーを引きつけていきます。ときにはそのファミリーレストランの季節毎のお奨めメニューを写真入りで紹介し、子ども連れで出かけ味わった感想や店員の態度など、個人として生の声を書き込みます。全国のユーザーからもさまざまな感想が書き込まれるでしょう。質問や苦情もあるでしょうが、それに立派に対応してファンを増やすのもボードリーダーの腕の見せ所です。
同様に、粉ミルクや紙おむつ、幼児服、教育雑誌など育児関連企業においても、ホームページにユーザーが立ち寄って感想や質問を書き込んだり話題に参加したりできる掲示板があれば喜ばれるでしょう。ユーザーの声がダイレクトに聞ける場ともなるし、コアなファンが育つ場ともなるはずです。
●ボードリーダーの人材養成と派遣
ボードリーダーは人柄や教養、表現力などが問われ、著作権の基礎知識も必要です。ボードの上手な運営方法や、どういうときにどんな対応をするべきかなどの経験則もあります。かつてパソコン通信の電子会議室を主宰する人材が不足し、養成スクールが必要などという話を冗談にしていたことがありますが、これからのインターネットの普及を考えると、インターネット・パーソナリティとでもいうべき職能、人材へのニーズが高まるのではないかと思います。当社は、そうしたニーズに応えられるプロジェクトを用意したいと考えています。すなわち、ボードリーダーの人材養成と派遣、そして派遣先の開拓です。 将来的には、インターネットで展開されるユーザー参加型「番組」を提案する仕事につながっていくのではないかと考えています。
SOHOでよい仕事を継続するために
●SOHOといえども、家族の協力は不可欠
仕事の場を家に移すことで得られたメリットは多々あります。子どもとの母子関係の修復はその最たるものですが、毎日ふとんを干せる、仕事の合間の気晴らしに洗濯ものを片づけたり味噌汁のダシをとったりできるなど、ちょこちょこ家事ができるというのも素晴らしいメリットで、しみじみシアワセを感じるところです。しかし、こういうことを強調すると、「育児・家事は女の役目」を強調することになりそうで用心したい気持ちです。 告白しますと、私が家事・育児に割く時間は、夫とほぼ同じかもっと少ないのです。これは20数年前、夫と共同生活を始めた最初の頃から変わらない、我が家の常識というか習慣です。在宅ワークであれSOHOであれ、社会的責任が伴う仕事というものをするからには、仕事の厳しさに変わりはありません。家で仕事をしているからといって、家事・育児の全てを妻に押しつけていいということはないのです。仕事をもつ人間への配慮をお願いしたいと思います。
●近くに欲しい手軽な運動施設
在宅で仕事をするようになっていちばんの悩みは、運動不足による肥満です。渋谷のオフィスへ通っていた頃は、駅まで30分歩き、急な階段を登り降りするなど、毎日かなりの運動を知らない間に消化していたのですね。SOHOにしてから、それがまったくなくなってしまい、太るばかり。散歩を意識的にするようになりましたが追いつきません。
中高年の男女が気軽に立ち寄って、ダンベル体操などの筋力運動や階段登りなどができる気持ちのいい運動施設があれば、どんなにありがたいかと思います。
優 秀 賞(国土庁大都市圏整備局長賞) 津野 佳代
はじめに
私にはサラリーマンの夫との間にユウジという3才になる男の子がいる。1年間の産休の後に仕事に復帰。育児と仕事の両立はキツイけれどもユウジのあどけない顔を見れば疲れはどこかにいってしまう。我が子は本当にかわいい それに、仕事だってこの苦労がもうじき報われるのだ。明日のA社との話が無事まとまれば、待ちに待ったシニアマネージャーへの昇進だ!ところが、トラブル発生。先方が夕方になって条件を変更したいと言ってきた。PM5:00緊急会議が開かれることになる。とんでもない。ユウジの保育園はPM7:00まで。どうしても間に合わない。困ってしまった
さて、この場合あなたならどうしますか?すぐに代わりにお迎えしてくれる母親が近くにいる幸せな人は別にして。夫に頼むことができれば一番いいのですが、彼も同じサラリーマンである限りすぐに時間の都合をつけることは難しいはずでしょう。ひと昔前に比べて、ワーキングマザーをとりまく環境はずいぶん好転しました。といっても相変わらず公立・私立を問わず保育園の終了時間は遅くてPM7:00です。(杉並区1997年12月時点)元バリバリのキャリアウーマンの経験から言えば、昇進を控える、重要なプロジェクトに加わったなど自分のキャリアチャンスに遭遇すると、人は必ず残業する運命にあるのです。けれども、どんなに優秀でやる気があっても自分の体を2つに分割することはできませんよね。子供の面倒を見る人がいなくて急な残業ができない、だから上司に重要な仕事をまかせてもらえない。あるいは、他人にチャンスを奪われてしまう。当然昇進も遅れてしまうし、おもしろい仕事から遠ざかり、どうして働いているのか分からなくなってしまう。そんな悩めるキャリアウーマンを応援したいという気持ちから簡易保育サークル作りを思いつきました。
簡易保育サークルとは(ビジネスの社会性・意義・目的)
コンセプトはアメリカ映画にもよくでてくるベビーシッターの超便利Version夕方編をめざしています。何が優れているか?それは、いつでも即座に利用できることです。ベビーシッター制のように少なくとも前日から予約をいれ何時から何時までと取り決める手間を省きます。急な残業が入り保育園の終了時間までにどうしても子供を迎えに行くことができない場合に、電話1本(もしくは電子メール)で1時間後からは子供の面倒を見てもらえるシステムです。とりまとめ役である私が何人かの夕方専用ベビーシッターと利用者の間をインターネットを通じて取り持ち、急な要請に応えるネットワーク(サークル)を作ります。料金は利用時毎にベビーシッターに支払うことにします。こんなサービスがあれば必要な時に仕事を延長できるし、さらにたまのナイトタイムをご主人と2人きりで楽しむこともできる。子育てから解放されて、妻・社会人としての時間を提供するのがこのサークルの主旨です。では、誰が提供するのか?それは、彼女のご近所に住む女性達です。この女性達は子育ての経験があるなら誰でも資格があります。現在奮闘中の人、ずっと昔に子育てが終わったおばあちゃん、とにかく子供が好きであればよく、それが在宅で収入を得る条件になります。システムですが、利用者が時間の都合がつかない夕方、彼女たちが保育園から子供を引き取って自宅で面倒を見ることにします(仮に、保育者と呼ぶことにします。)そして、サービス利用者と提供者が同じコミュニティーに属することを最大の条件にします。まず、その物理的な長所として、次の事があげられます。利用者の子供の大半は地元の保育園また幼稚園に通うので(1)保育者が近くの者であれば、子供を迎えに行くことが容易である。また(2)利用者が保育者宅から子供を迎えにいくのが容易である、からです。保育園からの距離・利用者と保育者宅の距離が小さいことは互いの利便性が高まる重要な要因であるし、また路上での危険(交通事故・不慮の事故)を避けることができます。しかし、私が最も期待することは、同じコミュニティーに属しながらすれ違いがちな利用者(ワーキングマザー)と保育者(専業主婦)が子供を通じて交流を深めることです。お互いに関心を持つ機会が生まれることです。たとえこの両者が同じ町内に住む者同士であっても、戸建ての住人が少ないマンション族地帯では同じ地域住民としての連帯感はありません。それが、今まで知らなかったけれども信頼できる隣人に子供を預ける、または預かることによって醸成することができると思うのです。また、ワーキングマザーには不足しがちな地域の情報を専業主婦は提供できるし、逆に専業主婦が接することのない世界の情報をワーキングマザーが伝える。互いの生き方に直に触れてることで視野が広がるはずです。加えて女性間のみならず世代間の交流を求め、わたしは保育者にご近所のおばあちゃんを積極的に採用したいと思っています。おばあちゃんは夕方自宅にいる可能性が高いことも魅力ですが、彼女達には若いお母さんにはない子育ての知識があり、なにより子供を育て上げた経験があります。そして、自分の孫のように子供をかわいがることができる気持ちがあります。ワーキングマザーはおばあちゃんを通じて昔ながらの育児法を得ることもできれば、さらにお年寄りを知らない我が子に新鮮な経験を与え今までにない世界に目を向けさせることができます。逆に、お年寄りは小さな子供に触れる喜びで新しい生きがいをもつことができるし、若い友人によって地域とのつながりを深くする事ができます。このように、このサービスの利用者・提供者は時間・金銭の授受といった契約的関係を超えて、同じ地域に属する者同士のつながりを期待するシステムであるため、あえて在宅ビジネスというよりもサークルと呼びたいと思っています。
今は家庭が一番大事(自分のワークスタイル)
私は結婚後丸2年間、ある銀行の総合職として働きました。仕事も夫との生活も充実、世に言うDINKS (Double Income No
Kids)を楽しんでいました。子供が欲しいと思うことがあっても、とにかく時間がない。そのころの私には仕事と夫以外の要素、つまり子育にかかわる心のゆとりや時間を見い出せずにいました。それから退職・自分自身の入院をきっかけに自分が一番大切なものは仕事ではなく家庭であることに気づきました。そして、子供を産みたいと真剣に思うようになりました。子供との生活を想像するだけで暖かい気持ちになれるし、未知の世界に対する好奇心もあります。けれども、それと同時に、それだけで満足できるのか?という不安がいつも頭をよぎります。今まで、社会で働くことで自分がどんなに成長できたか、素晴らしい出会いがあったか、それをこれから長い人生の中であきらめることはやはり苦痛でした。そう考えるうちに出した結論は、子供が幼いうち(0〜3歳)はいつも側にいること、それ以降は成長に応じて仕事に社会に復帰するというものです。(もちろんこのプランでは以前と同じように会社の第一線で働くことは不可能なのは承知してのことです)では、復帰したと時に何が一番不安か?それは、幼い子供を孤独にすることでしょう。子供が外を一人歩きできる年齢になったとしても、暗い家にひとりきりにしておくことは親として辛いことです。そこで、前述のような近所の保育者がいればどんなにいいことか。彼女に保育だけでなくちょっとした「お手伝いさん」的な役割もお願いするわけです。具体的には、働くママ(利用者)が少し残業で遅くなった時に保育者の家で子供が母親を待つことができるようにする。保育者の家庭が夕御飯の時間であれば、一緒に頂く。子供を母親・保育者のお互いの合意の元に預かり、サービスとして料金化することで、合理的に気兼ねなく子供を預けること、その対価としてお金をうけとることができるわけです。このシステムがあれば気楽に働けるなーと思いませんか?それに、保育者(専業主婦)だって家にいながらにしてお金が稼げるわけです。
では、具体的にどんな設備・環境が必要か
(始めるために必要な機器環境や、これから地域社会にのぞむこと)
前述通り、いつでもすぐにベビーシッターができることがこのサークルの主旨です。まず、利用者はこのサークルに登録します。一方、保育者は利用者の急な依頼に応じることができるよう保育者の人数は「利用者:保育者=1:10」を目標として採用します。そして、保育者の選択権は利用者に与えます。では、利用者はどういう情報からその日の保育者を選ぶか?そこでインターネットの登場です。インターネット上に保育者の毎日の予定を記したホームページを掲載します。そこから、利用者は自分のその日の条件に最も都合の良い保育者を検索するわけです。このホームページは保育者のプライバシーを尊重するため登録した利用者だけがみることができるようにパスワードで保護します。1日に2度更新、予定変更の連絡が保育者から入り次第即座に反映させます。利用者がホームページ上で保育者を決定した後、保育者との中継者である私に連絡します。そこで、私が保育者に最終的な意思確認をし、契約(時間・料金等)を確認、利用者に回答します以上のシステムから、利用者にはインターネットに接続可能なパソコンがオフィスに設置されていること、保育者には常に私からの連絡がうけられるよう携帯電話があれば便利でしょう。ネット接続パソコン・携帯電話はかなり普及しているため初期投資としては軽微な金額でおさまると思います。贅沢をいえば、保育者の家庭にインターネットに接続したカメラサーバーを設置すれば、利用者はリモートコントロールで我が子の姿をライブ映像をオフィスで見ることができます。ただし、これはかなりの出費(価格例:150万円)を要します。保育者の採用については、保育の責任能力・地理的な条件を重視し採用するつもりですが、他人の子供であっても我が子の様に世話をすることのできるようなやさしい人を基準に人選したいと思っています。20年ほど昔、私が子供だったころに周囲に沢山いた、ちょっと口やかましいけれどもあったかいおばさん・おばあちゃん達がモデルです。彼女達は、いわゆる「子供はみんなのもの」という言葉をただの標語ではなく日々の生活で実践していました。今でもこんな気持ちを秘めている女性はもちろん沢山います。ただ大人同士が孤立しがちなために「よそ様の子供」という意識にとらわれてしまい行動にまで発展しないだけなのです。このサークルを通じてそんな思いを実現できるのではないか、これは私が最も期待する効果です。男性も同様です。保育者のご主人も保育者が預かった子供と触れあいこの気持ちを意識する事ができるでしょう。一人、二人と様々な子供とのふれあいを通じて大人達が我が子以外の子供たちを見守ることができるようになって、その輪が広がれば、それは暖かい地域社会の実現につながります。
このビジネスを思いついたきっかけ(仕事と家庭の両立について)
わたしの周囲の女性90%がたどるパターン。結婚する→しばらくDINKSで優雅な夫婦生活→そろそろ子供欲しいなと思う(結婚3年くらいして)→出産(大半はその前に仕事を辞める)→産休復帰するも子育てと両立できず退職、もしくはやりがいは二の次にして淡々と仕事する。わたしもご多分にもれずこのタイプにあてはまります。世の中に女の人は沢山いるのに残念だな、どうすればもっと違う生き方ができるのかしら?ワーキングマザーが精神的に最も負担を感じることは幼い子供を一時的にせよ孤独な状態にしてしまうことだとすれば、これを解決することによって魅力的な仕事へもチャレンジできるかもしれない。そんな思いからホームページを利用したこの簡易保育サークルのプランが生まれました。仕事と家庭の両立は女性にとっては永遠のテーマです。体力面の問題は、便利な家電製品や家事代行サービスの普及により飛躍的に改善されました。だから、これからは不安を解消し、心の通ったサポートシステムが必要だと思うのです。ワーキングマザーだってもっと仕事に打ち込んでもいいのではないか。子供と家庭があるからといって自分のチ?,u毆)ャンスをあきらめるなんて寂しいですよね。このサークルを利用して女性に自分の可能性をどんどん追求して欲しいと思います。またこのサークルは、家庭を守る専業主婦(保育者)にも在宅勤務による収入という大きな収穫をもたらします。さらに新しい隣人との交流によって彼女は広い視野と刺激を得られます。また、保育者がおばあちゃんであれば、子供と真剣に触れ合う時間をもつという生きがいを手にすることができます。(この発想は孤独な老人をなくし、高齢化社会における新しいシルバービジネスの可能性を秘めています)こうして、このサークルに集まる人々がコミュニケーションを深め、地域全体がむすばれていく。これは、ネットワーク社会という新しい時代においてもビジネスとしてきっと成立することでしょう。なぜなら、このサービスのコンセプトは私たちが忘れかけていた人と人とのふれあいを大切にするものだからです。
佳 作 7点
麻生 愛
副題:フラワーアレンジメントを活用した地域の活性化事業
はじめに
現在、私はフリーのナレーターとして都内を中心にした展示会をベースに活動しています。企業の展示会という関係から、常に最先端の情報・技術を多くの人々にわかりやすく伝えるのが仕事ですが、その仕事を通して現在の情報社会の進歩を見てきました。その一方で、平成9年に「フラワーアレンジメント・インストラクター」資格取得後、知人の紹介などでフラワーコーディネーターとしても活動を行っています。そこで、現在の情報社会における情報手段として、近年注目されている「インターネット」を活用したフラワーアレンジメントビジネスを考えていきたいと思います。
フラワーアレンジメントの問題点
フラワーアレンジメントにおける問題点として、第1に、インストラクターとしての人材が都市部に集中し、地方部に不足していること(地方部にスクールがないため)、また、インストラクターになるためのスクールには、多額の費用と時間の制約があること。第2に、インストラクターになっても個人(花屋など大きな組織に所属していない)では、それを活かすことがなかなかできないこと。第3に、アレンジのための花材に費用がかかるため、フラワーアレンジメントの需要側に費用面での負担が大きくなることなどがあげられます。これらの問題を解決していくためには、インストラクターとしての人材の育成を地方部にも広め、その育成の費用面・時間面での負担を軽減する。さらには、育成した人材に活動の場を提供し、安くていい花を需要側に供給する必要があります。一方、都会の花屋や花市場ではなく、花苗農家に目を向けると、そこにもいくつかの問題点があります。現在、農協では「地元の花苗農家の花をどう活かすか」という問題があるそうで、花と言っても特に、都会の市場に出せない花、つまり、「花の大きさが同じではない」「長さが違う」「多少枝が曲がっている」「葉の色・付き方が一定ではない」など、1本1本ではそれほど問題もない物(野菜でいえば、曲がったきゅうりが市場に出せないように)が、大量出荷だと問題になってしまうということです。それらの花を活かすために農協では、その花を加工した状態、つまり、フラワーアレンジメントで活かせないかと考えているようですが、指導者がいないことと、供給の場が無いことなどから、なかなかうまくいっていないのが現状です。
フラワービジネスの展開
以上のような理由から、「都会のニーズに花苗農家の花を活かせないか」と考えました。
まずビジネス展開として、
1.「都会でどのようなニーズがあるか」などのマーケティングを行う。
2.首都近郊の農家(農協)における指導者育成を行う。
3.指導者育成後、地元の花をベースに生産・販売ルートを開拓するとともに、都会の需要側の
ニーズに対するアドバイスを行う。
4.販売・生産の拡大を図る。
以上のステップが考えられます。
それでは、1〜4のビジネス展開について、詳しく述べていきたいと思います。
1.「都会でどのようなニーズがあるか」などのマーケティング
都会では、様々なニーズがあります。例えば、ブライダルフラワーに着目すると、ホテルや結婚式場では、大きな花屋組織などが入り込んでいて、個人レベルでのビジネスは難しくなっていますが、最近ではオリジナルブライダルが流行ってきているという側面もあります。オリジナルブライダルとは、レストランや個人の家、小さな会場を借りて独自の結婚式を行うことで、その流行りに伴ってオリジナルブライダルのプロデュース会社が多く設立されています。なぜ、オリジナルブライダルが流行っているのでしょうか。それは、ホテルや結婚式場では、決められたプログラムの中、個性のない結婚式になり、ただでさえ費用が高い上に、さらにこちらの希望を取り入れようとするとオプションとして多額の費用がかかってしまいます。しかし、自分たちの希望どおりの結婚式ができ、費用も安く済ませたいというニーズが増えてきています。オリジナルブライダルのニーズが増えるということは、必然的に個人ベースでのフラワーコーディネートのニーズも増えるということにつながってきます(スモールビジネスの需要が増大)。さらに、会社の受付、レストラン、美容室、ブティックなど、バブルの時代には多くの花で飾られていましたが、バブル崩壊後、経費削減のためにそれらの花は消えていってしまいました。しかし、「殺風景だし、安くできれば花を飾りたい」という希望が多いのも現状です。これまでは、大きな花屋組織に注文していたため、費用がかかっていましたが、個人レベルでのフラワーコーディネーターに注文することにより、費用を抑えつつ、オフィス、レストラン、美容室、ブティックを花で飾ることが実現できます。それらのニーズが多いのも、大都会だからこそなのです。さらに、大都会だからこそ、それらの情報が収集できるのです。つまり、都市部に住んでいる女性が、「都会でどのようなニーズがあるのか」をマーケティングしていくことが、フラワービジネスの展開につながってくると思います。マーケティングの方法はいくつかありますが、インターネット上にホームページを開設し、情報を収集するのも方法のひとつと考えられます。
2.首都近郊農家(農協)における指導者育成
フラワーアレンジメントの問題点の中に「指導者が都会に集中している」と述べましたが、一方、花を供給する側の農協では、「地元の花を活かしたいが、指導者が不足している」という問題がありました。それは、農家は花を生産するところで、フラワーアレンジメントのようなどちらかというと、芸術的要素の高い生産物をつくるところではないからです。そこで、農協等とタイアップすることにより、まずは首都近郊における花生産側のフラワーアレンジメントの指導者育成を行っていくことが考えられます。育成の方法にもいくつかの問題点があります。1つ目はスクールの費用がかかる。2つ目は時間の制約がある。3つ目は指導者がその場所まで行かなくてはいけない、もしくは指導される側がその場所まで来なくてはいけないということです。しかし、インターネットを活用することにより、すべての問題は解決されます。農協等とのタイアップにより、地元の花が使え、花材にかかる費用を削減できます。つまり、地元の花を活かすことにつながります。指導者は都会の自宅から近郊の人々への指導ができるため、時間的な制約が少なく、家庭との両立が図れます。指導の場所を借りたりなどの問題がないため、場所を問わず、どこの人にも教えることができます。インターネットを活用するための環境としては、本来ならば受講者側に1人1台パソコンを設置するのが理想ですが、地元農協等の施設に設置し、インターネット電話を活用して行うことが考えられます。近年、パソコンの画像処理の充実により、受講者の作った花を立体的、かつクリアーにとらえることができ、適切なアドバイスが可能となったからです。インターネット電話とは、いわゆるTV会議システムで、パソコンの上に専用のカメラを設置し、TV電話のように映像と音声を同時に送るシステムです。受講者側と指導者側で接続し、映像を見ながら音声で指導する方法です。近い将来は、1人1台の設置も可能でしょう。つまり、インターネットを活用して、都会側の指導者の女性が、首都近郊の受講者を育てていくことが考えられます。
3.指導者育成後、地元の花をベースに生産・販売ルートの開拓と、需要ニーズのアドバイス
1.のマーケティングをふまえ、指導者の育成後、地元の花を活かして加工後(フラワーアレンジメントしたもの)の花を販売していく。現在のニーズの中で前にも述べたように、花材が都会の市場、花屋を経由し、さらには、大きな花屋組織で作成されたアレンジメントは費用がかかり、需要側の問題点になっています。そこで、それらを経由しない販売ルートは、コストの削減につながります。しかも、大量出荷には向かないが、1本1本では問題のない花を使えば、さらに花材のコストは削減できます。一方、都会側の指導者は、マーケティングに基づき都会のニーズを受け、元受講生に発注するとともに、アレンジメント実施上の具体的アドバイスを行います。さらに、都会側に商品を届けた後のアフターケアも都会側の指導者が行います。つまり、都会側の女性が商品の受注をし、首都近郊の生産者が受け、生産し、都会に商品を納品するとともに、都会側の女性がアフターケアを行っていくことが考えられます。
4.販売・生産の拡大を図る
1.〜3.のネットワークが構築できたら、次のステップとしてさらなる販売・生産の拡大を図っていきます。つまり、他の農協等とのタイアップです。上記は1つの農協等とのタイアップを対象に考えてきましたが、販売ルートの拡大に伴い、首都近郊の他の農協等、生産側の拡大を図っていくことが考えられます。それにより、花卉生産の増大と雇用の場が確保され、地域の活性化につなげることができます。さらには、全国展開で各地方都市、その地方都市近郊でのビジネスの展開も考えていくことも可能です。
おわりに
以上が、「インターネットを活用したフラワーアレンジメントビジネス」の提案ですが、なぜ私がこのようなビジネスの提案を考えるようになったのかを、最後に述べたいと思います。まず一女性として、一生できる仕事を考えたときに、様々な障害があげられます。1つ目は、家庭との両立です。女性が社会に進出し、以前よりは働きやすい環境が整ってきたといっても、やはり夫婦2人の場合では働けると容易に想像できますが、子供ができた場合に、毎日外に出かけ、決められた時間を働くことは、今日の我が国においては難しいと思います。2つ目は、なによりも仕事のやりがい、自分のやりたい仕事を一生やっていきたいという希望です。一般的な会社組織に属していると、その仕事を一生続けたいと思っても、家事・育児の負担が現状ではどうしても女性に多くかかってしまい、続けるのは難しいのです。結局は、家事・育児のために女性はやりたい仕事を、悪い言い方をしてしまえば「犠牲」にしなくてはならないのです。これからの女性は、人生を「犠牲」にするのではなく、現在の情報化社会・ハイテク時代の様々な「道具」を利用し、社会に進出していくことが可能であると考えます。さらに、一生続けたい仕事のフラワーアレンジメントの現状を考えたとき、いざ勉強が終わり、フラワーアレンジメントの仕事に就きたいと思っていても、その資格をうまく活用できず、実際にはフラワーアレンジメントから離れてしまっている女性が大勢います。そこで、自分を含めそのような女性達がこれからの社会で、どのように活躍できるかを考えていきました。そして、フラワービジネスの中での様々な問題点、「花材のコストがかかる」「地方指導者の不足」「地元の花をさらに活かすにはどうしたらよいかという花苗農家の悩み」を考え、フラワービジネスの提案を展開していきました。今回の提案では、都会側の女性が中心となり、首都近郊の農協等とのタイアップにより、指導者を育て、さらに、その指導者とのビジネス展開を述べましたが、その他にも、様々なビジネスが考えられます。例えば、フラワーアレンジメントを趣味で習いたいと思っていても、子供がいたり、費用面で習えない人も大勢いると思います。インターネットを活用することによって、自宅対自宅でフラワーアレンジメントを指導していくことも近い将来はできるようになるでしょう。また、都市部と地方部を結ぶことにより、仕事や生産の場の創出ばかりではなく、情報を通して様々なビジネス展開が考えられることなどから、地元の活性化につながるでしょう。さらには、近年の田舎志向の増大から、多自然居住地域における生活スタイルの拡大も図ることができるでしょう。都会のニーズ・シーズと多自然居住地域のシーズ・ニーズを結ぶことにより、様々なビジネスが可能になります。これを具体的に結ぶのが、都会にいる私たち働く女性なのです。インターネットを活用することにより、様々なニーズを満たすことになり、ニーズを満たすためのビジネス展開の可能性はまだまだ無限なのです。
犬塚 純子
私は結婚するまで地元で、ある教育産業の会社で働いていた。バリバリのキャリアウーマンを目指していたわけではないが、自分なりのこだわりをもって仕事に打ち込んでいた。結婚と同時に退職、そして出産、あわただしい生活の変化のスピードが少しゆるやかになるにつれ、大きな喪失感に襲われるようになった。「自分」というものが感じられないのだ。それでも第1子の小さい頃は、公園の小さな人間関係を大切にしようとサークル活動などをしたが、夫の転勤とともに転居。過疎の町にすんでまったく気持ちの上で取り残された状況になった。
やがて第2子を出産。生後3ヵ月で重度のアトピーと診断される。自分探しの話どころではなくなった。子どもの病気のために、生活スタイル、そして将来の設計も変更しなくてはならない状況になった。卵、牛乳はおろか、小麦、米、大豆もダメ、お肉は、ヘビ、ウサギ、カエルを試してくださいという話。今まで与えていたミルクもダメ、一般のお店では取り扱わない特殊なミルクを買わなくてはならないという始末。これは本当にショッキングな出来事だった。もし、ミルクのお店を探せなかったらこの子はどうなるのだろうと考えたら、不安で、不憫で、泣きたい気分だった。それから、赤ん坊の病気との戦いの日々が始まった。
この日々の中で、私は考えた。これが、『私』なのだと。子どもという存在に対して、あたりまえだけど一途になれる、この子のために髪を振り乱しながら生きている、そんな『私』というものを私は感じることができる、これは確かな感触であった。その過程で多くの人に支えられた。多くのこと学んだ。辛い日々ではあったけど、私は、私しかできない仕事を一生懸命こなす中で、多くのものを得ることができた。やがて、医者もびっくりするほどのスピードで、子どもの病気が回復をしてきた。そうなってくると、アトピーとの関わりのなかで見つけた自分というものを、何か別の形で残せないかと思うようになった。自分の一番の特色を出せ、独自のネットワークや知識、これを使わない手はない・・・・そこで考えたのが、現在私がやっている『ぶきブキ工房』というお店である。変わった名前だと良くいわれるが、「ぶきっちょなお母さんのお店」という意味である。
このお店は店舗がない。助っ人も夫だけである(最も夫は本来の仕事をもっているが)。事業内容は手作り服、お箸、木のおもちゃの注文制作、および通信販売である。パソコンを使って制作したパンフレットをDMし、手紙、FAX
にて注文を受け、制作をし、商品を郵送するというものである。この商品は、すべて自分の子どもが手にして、口にして、着てみて、喜んだり、安全であることを確かめているものばかりである。自分の子どもが安心して使えるものを、他の人達に提供したい、同じ悩みやこだわりを持った人に少しでもお役に立てればという気持ちから始めたのである。私が無店舗のお店を作ったのはいくつかの理由がある。もちろん、店舗を構える不動産もなければ、資金もないというのはいうまでもないが、私は、営業が得意ではない。人付き合いならば多分人並み程度にはできるが、「売り込む」ことが苦手だ。こんな私が客商売をするのだったら、通信販売がいいと思ったのである。
一方、「一人で気ままに商売をしたい」ということもある。このお店を作ったというのは、先程の「自分探し」の結果だと思う。今どきの言葉でいうと、私にとっての『ヒーリング』ともいえるだろう。単純に営利だけを目的としにくいのである。自分の「こだわり」を全面に出していくことが第一義なのだ。「そんなのは、ビジネスではない」とお叱りを受けそうである。しかし、お金を儲けることだけが目的ならば、正社員を目指すほうが近道だろう。女のビジネスは男のそれと違った感覚を持つものもいる。こんな考えの私のもとに、人がついて来るとも思えないし、仮に人が来たとしても、今度は人を使うという別の能力が要求される。私は人をマネージメントする煩わしさをリスクとして背負いたくない。その手間は他のことに使いたい。そして、それ以上に、すべてが自分が目の届く、等身大のビジネスをしたい。そんな私が、それでも夫をたよりにしたのは、ただ一つ、パソコン、そしてインターネットを導入して商売がしたかったためだ。
パソコンをどこまで使いこなせるのか。顧客リスト、帳票の管理、パンフレットおよびDMの作成、そして情報収集。一つの箱に多くの仕事を頼まなくてはならない。私のビジネスの成功のカギの一つは、どれだけ人件費と広告宣伝費を抑えられるのか、ということだ。私の店は、お客さんの注文を受け、サイズ、色、名前入れと、ほぼオーダーメイド的な商品を提供するというものである。ふつうならかなりの金額をとられる商品をできるだけ安く、できるだけ高品質なものとしてお出しすることをモットーとしている。相手は、子どもやお年寄りが多い。身体にやさしく、安全ということが第一条件である。したがって、素材選びにもかなり神経を使わなくてはならない。最新の自然派塗料を得るために北海道に行く。オーガニック・コットンを得るために名古屋の会社に発注を頼む・・・。コストをかけようと思えばいくらでもかけることができ、こだわるからにはかけなければならない。それを可能にするために、できるだけ他の経費を削減しなければならない。そのためのパソコン導入であり、インターネットだったのだ。夫はそのために必要なオペレーターであった。この形式なら家族に負担をかけにくいというのも大きな理由である。かなり回復したといっても、やはり病気を持っている子どもなので、保育園での生活も心配だ。子どもに何かあったらいつでも駆けつけられるようにしたい。それには、在宅勤務、フレックスで仕事が組める、現在の形式がいいと思った。では、実際インターネットを使ってどれだけのビジネスが現在できているのか。答えは限りなくゼロに近いといわざるを得ない。しかし、これについては、急激な変化が起こりそうな予感がしている。実をいうと、昨年4ヵ月ほどある企業の母親向けのホームページに写真入りの広告を載せた。ところが注文はおろか、問い合わせすら1件もなかった。そのときには相当ショックを受け、自嘲気味に「子育てをしている母親はインターネットを見ている暇がない」とか「うちの商品を買う人とこのホームページを開いている客層とは一致していない」と結論づけをしたが、この状況は今後様変りをすると思われる。それは、現在主婦の間にインターネットによる「E-mail」が急増していると思われるからだ。もちろん単純に、お母さんがインターネットを始めたと言っているのではなく、そういう家庭が増え、環境が整ってきたことを物語っていると思う。昨年の年賀状にインターネットのアドレスの載せたのだが、ほとんど反応はなかった。ところが今年は、年賀状を見てということで、「E-mail」で返事を入れてくる友人が増えてきている。その多くの人が、「慣れれば簡単だよ」というコメントを出している。(現に機械オンチの私ですら、こうしてインターネットで原稿を送っている!)彼女たちは、新しい通信手段を手にいれ、それを使いたがっているように思われる。私のビジネスはほとんどお母さんが財布のヒモを握っている。したがって、今年はもう少しホームページにからんだ注文が増えるのではと期待している。一方、これにはびっくりしたのだが、今まで注文の方法を手紙とFAXに限っていたのだが、昨年の暮れから「E-mail」による注文がぼちぼち出てきた。うちのFAXは感熱紙対応なので、傷もつき易く、記入するのに注文表としては、いささか頼りない。ところが「E-mail」できた注文表は、データがコンピュータに残るし、普通紙に印刷できるので便利である。この注文の有効な管理方法がないか、夫と現在研究中である。
さて、『ぶきブキ工房』が現在力を注ごうとしているのは、老人介護服の制作、販売である。介護が必要な人の服装は、幼児に対するような肌へのやさしさ、生地の強さ、身体の不自由な場所にあわせた細かい対応、そしてなによりも機能性が問われる。ところが数がそんなに出るわけがないので、介護服そのものは高価な上、生地のデザイン、色の種類もほとんどない。確かに介護服そのものに個人の趣味は関係ないのかもしれない。でも、介護をされる人達にも『豊かな気持ちで老いる』権利はあると思う。着るものぐらい自分で選びたいであろうし、ハンディを持つまでは選んで、こだわって生きてきたはずである。そう考えると、介護服にも個性化が起こってもいいのではないかと思っている。しかし、介護を必要とされる人は、まずお店に買いに来ることができない。逆に介護する人もそうした暇がない。また、お店に来たところでその人たちは、なかなか試着ができない。そこでぶきブキ工房ではインターネットによる注文を行いたい。イメージは次のとおり。介護服を買いたい人が、ぶきブキのホームページを開くか、もしくはパンフレットを見る。そこには介護服がいくつか紹介されている。注文したい場合は、ほしい機能(例えば右半身マヒなので右側袖下にファスナーをつけ、全開できるようにする)サイズ、色、柄の指定等を詳細に記入する。それをもちろん、インターネットで注文しても構わないが、顔写真をこちらに郵送してもらい、こちらで写真をスキャナーで読み込み、介護服の写真とデジタル合成してバーチャル試着(?)をし、それを打ちだして、相手に転送もしくは郵送する・・・・・。
もちろん、介護を受ける人がコンピュータを持ち、かつ、使いこなしている、などということは考えられないが、介護をする人がもしノートパソコン程度を持てる時代が来れば可能であると思う。現在『介護法』の問題で、介護の在り方が問われているが、このようなサービス(ケア)が認められないであろうか。せめて、現在各地に作られているデイケアセンターにインターネットが繋がれば、少しでも可能性が広がると思う。行政を巻き込んだ夢であるが、夢をみるのは自由である。もともと「こだわり」が中心なのだからこわいものはない。その夢を見させてくれるインターネットであってほしい。
最後に、インターネットで情報を発信する度に思うことがある。私は、私独自の情報発信の媒体を手にいれたのだと。私は見知らぬ人と話をするのが苦手であるという話は先に書いたが、一方、多くの人と出会い、励まされ、勇気付けられた。不思議なもので、私のお客様は、注文なさる際に、日頃思うことや子どもの様子、日々悩んでいることなど、昔からの友達にあてた手紙のように綴ってくださる方が多い。こちらはそれを受けて、イメージをふくらませて服やおもちゃを1つ1つ手作りし、納品書には、その返事やメッセージを書いて送っている。さらに代金入金用の郵便振替口座の通信欄には、商品の感想やまた手紙が入っている。その度に「仲間がほしい」「語り合いたい」そんな想いが伝わってくる。人は『自分の想い』を誰かに表現したいものだ。それは、その人にとっての『ヒーリング』なのかもしれない。人はそれぞれ「癒し」を求めている。きっと有機野菜を食べ、オーガニックな布で身体を包むことを好む、あるこだわりを持った個々人のやりとりの媒介として、私の商品や通信があるように思う。
時には、「励ましてくれてありがとう」とお礼をいわれたりする。平凡な主婦にとって、これは本当にうれしいことであるし、感激の日々である。最近では、もっと多くの人に出会いたい、そんな気持ちにもなる。そこで、私がアトピーについて知っている情報や考えを文章にまとめるとしよう。一昔前ならこれを世に発表するには、出版という媒体しか考えられなかった。一方通行の媒体では寂しい。でも、インターネットなら、やりとりはある程度可能になる。ひょっとしたら、私の情報を欲している人に、情報を受け渡すことが出来るのでは、そして仲間が増えるのでは・・・・・。そう考えると、キーボードを叩く音が軽やかになる。14インチの画面に願いを込めて、今日も私は私探しを続け、キーを弾く。インターネットを通して、ビジネスとして、また見知らぬ人とのインタラクティブな交流がなされるとき、私はまたもう一つの私をはっきりと探せる気がする。本気でインターネットしてみたいと思う瞬間である。
ふと、私はこう思う。私の夢は翼をつけて、細い光の管の中を飛翔する。一人でも多くの人との繋がりを求めて、それがビジネスになれば最高である、と。
中島 牧子
副題:在宅型スモールビジネスのすすめ
私がパソコン教室を始めたわけ
平成不況期と言われる現在、景気が一向に回復せず家計消費支出の伸び率も99.8%と伸び悩んでいます。そんな中でも160%以上の伸び率を見せている商品があります。上位一位は損害保険、そして第2位がパソコンです。損害保険が第一位にあがっているのは、リストラや阪神大震災、一連のオウム事件にともなう不安増大により「万が一に備えての安全確保イコール安心」という意識の高まりが影響していると考えます。第2位のパソコンは今まで伸びつづけていたビデオやオーディオといった家電製品を抜いて浮上してきたものです。1995年にはパソコン出荷台数が500万台を突破し、現在では1000万台を超えようとしています。家電製品が加速度的に普及する普及率30%段階に達したのは言うまでもありません。パソコンが一家に一台の時代もそう遠くはないことだと思われます。
こうした社会背景があり、これをビジネスに活用すれば絶対成功するとわかってはいるものの、パソコンに触れたこともない私に何ができるのだろう?と考える毎日でした。その当時(今から3年前)、私は人材派遣会社から一般事務職として出版会社に勤めておりました。その会社でも私が勤め始めてからパソコンを導入したのですが、パソコンを操れる人がいません。そこで一番暇のある私が勉強して皆に教えることになったのですが、パソコン雑誌を読んでもマニュアル本を読んでも言葉がチンプンカンプンで一向に理解できません。「これは実践で覚えるしかない」と毎日暇があればパソコンの前に座って研究(?)をしていました。そう言えば、家に新しく買ったビデオも電子レンジも取り扱い説明書など目を通さずに「こうすればいいんじゃない」と勘で使って体験で覚えました。子供と同じで理屈はどうでもいいのです。とにかく目で見て手で触って覚えるタイプのようです。3ヶ月が過ぎたころから、ある一定の操作はできるようになりましたが、それ以上は伸びがないまま、その会社自体がなくなってしまい(私の勤務していたところが横浜支社で本社と統合されてしまった)、職と勉強の場を失ってしまいました。ちょうどその時、第2子がお腹にいたのでこれを期にしばらく仕事を休むことにしました。
出産後3ヶ月になったころ、そろそろ次の就職探しを・・・とトライしたものの休んでいた9ヶ月間に不況の嵐がいっそう吹き荒れ、小さな子供を抱えた者などそれを理由に面接さえもしてくれない状況でした。また、事務職を希望してもパソコンが使えるのは当たり前、どのアプリケーションのどのあたりまで使いこなせるのかが採用か否かの分かれ道のようでした。それならパソコンスクールにでも行って勉強しようと思ったものの、どのスクールの案内を見ても値段が高いのに驚きました。その上、我が家の場合は子供をベビールームやベビーシッターに預けて行くわけですから二重にお金がかかるわけで、経済的に無理があると泣く泣くあきらめました。
『いや待てよ!私がこれだけ困っているのなら、同じような状況の人は他にもいるはず。もっと安価で主婦のお小遣いで通えるパソコンスクールを作ればどうだろう。おまけに託児室付きで時間も自由にすれば「子供がぐずってどうしよう、もうスクールの時間なのに間に合わない」なんてこともなくなり、きっと私のような人が来てくれるはず。』と思いました。
また、小中学校でもパソコンを導入して授業の一部になっているという話も耳にします。子供たちは学校でパソコンを学ぶ機会があり、現役で仕事をしている人は会社で学ぶ機会があります。となれば、取り残された主婦層や高齢者層は独学かスクールに通うしか習得の道はないでしょう。しかし、パソコン初心者が独学で勉強するのが如何に難しいかは、私自身がよく知っています。だれか教えてくれる人がいればどんなに楽だろうと何度も思ったことは事実です。
また、以前学習塾の講師をしていたこともあり人に教えることには抵抗がないし、パソコンを揃えれば自宅でだって教室はできるので資金的にはさほどかけずに始められます。あとは自分が教えられるだけの実力をつけるだけ(これが一番難関だったりして・・・)です。といった経緯で私のスモールビジネス案が出来上がりました。
私のワークスタイル
自宅兼教室であるデメリットは、人が毎日来るのでいつもきちんと片づけて、悪がきどもが汚した部屋をきれいに掃除しておかなければならないことです。しかし、そんなことよりもメリットの方がたくさんあります。例えば、授業の空き時間に洗濯物を片づけたり、夕食の買い物や準備をしたり、子供に何かあった時でも断りを入れてすぐ迎えに行けることや、毎日の鮨詰めの通勤電車に乗らなくてよいこと、ラフな服装でよいことなどなど。始めのうちは家事・育児の中に仕事の時間を作るといった感覚でしたが、次第に生徒が増えるにつれその割合が逆転してきました。この1月からは、今までの場所を教室オンリーにして自宅は別の場所に引越しましたので、メリットの半分くらいは減ってしまいましたが、逆に仕事に専念できるようになり効率があがったと思います。
教室を明けている時間は、当初平日の10時から17時までだったのですが、夜の時間帯や日曜日も明けて欲しいという要望があり、夜は曜日を限って日曜日は短時間だけ明けるようにしました。これだけ言うと、「休みもなくよく働くよ」と思われそうですが、完全予約制なので、生徒が入っていない時間帯は、夕食の買い物にいったりエアロビクスに行ったり事務仕事をしたりと自由に使うことができます。
教室を始めるに当たって
当初必要な物はパソコン4台にプリンターやスキャナなどの機器と机・椅子なのですが、一度に購入するのは無理でしたのでレンタルにしました。またインターネットの授業をするために電話回線をISDNに替え、プリンターやファイルを共有するためにLAN環境にもしました。教室は自宅の一室(6畳)を使ったので、家賃は今までと変わりません。ということで、初期の設備投資はざっと10万円くらいでした。何とか家計に響かせずに済む範囲で押さえようと見栄や自分の好みは捨て、必要最低限のものだけ揃えました。例えば、教科書を入れる棚がなければ家庭のカラーBOXを一個空けて使うというように、足りないものは家庭にあるものを利用しました。それよりも、生徒を集めるためのチラシを印刷したりミニコミ誌に掲載したりと広告宣伝費の方の経費がかかりますが、こればかりは生徒が集まって始めて成り立つ事業なので必要不可欠のものだと目を瞑りました。そんな中でも、印刷会社は何社も当たって安いところを探したり、チラシも自分の足で撒いたりとできる限り経費を押さえるように努力しました。
その後、生徒からの要望が多かったものに関して、(例えばデジタルカメラやアプリケーションソフトを増やしたり)徐々に環境を整えて行っています。しかし、ソフトの度重なるバージョンアップやパソコン自体の性能アップなど秒進日歩のこの世界について行くのは大変経費のかかることで、頭の痛いところでもあります。
これからの展望
今後はインターネットサロンを開設し(とは言っても教室の一部にテーブルと自由に使えるパソコンを用意するだけですが)、お茶でも飲みながらネットサーフィンやおしゃべりをして行ってもらおうと計画しています。つまり、誰でも気軽に立ち寄れる教室にして、気軽にパソコンに触って「パソコンってこんなに楽しいものなのだ」と感じてもらえればいいなと思っています。
また、インターネットに関しては地域の情報発信源になりたいと思っております。具体的にはインターネット上で会員同士(卒業生を含め生徒さんは全員会員となり外部からも加入可能)パソコンで困ったことの相談や今度飲み会を開こうとか近くでネットワークフェスティバルがあるよとか旦那が小遣いを使いすぎて困るので何かよい方法はないかとか様々な情報や意見を交換してもらう場にします。いわゆるチャットやニューズグループのようなものの簡易版ですが、顔はみたことないけれどもパソコン教室に関わりのある人限定ということで安心して仲間に入っていけることが狙いです。そして、自作のホームページを載せて自分の作品紹介や商売の宣伝をしたい人、あるいはメールアドレスが欲しい人・仕事の途中の出先からでもメールを受け取りたい人などにも利用してもらおうと考えています。
それだけではなく、前回の阪神大震災の時に電話が不通になって困っているところで、パソコン通信が多いに役に立ったことを知り、もしもの時にこの地域のネットワークは絶対必要だと感じています。そして、生徒の中にも70歳代80歳代の方もあるいは病気を持っている方もいます。毎日何らかの書き込みがあるのに突然書き込み無いとなると「どうしたんだろう」と電話を掛けたり様子を見に行くことも可能です。
こうした皆のつながりや助け合いを大事にしたいと夢は膨らんでいます。
一番の課題<仕事と家庭の両立>
この仕事を始めるに当たって両親や兄弟、主人も含め誰も反対する人はいませんでした。しかし私自身の中で、子供がまだ小さく親の愛情をいっぱい注がなくてはいけない時期なのに大丈夫だろうか?という不安がありました。相反して「この仕事を始めるのは時代の流れを見ても今しかない!」という押さえ切れない気持ちもありました。こんな葛藤の中で、小学校時代に教えていただいた先生から「やってやれないことはない。やらずにできるはずがない。失敗を恐れず突き進め」といつも言われていたことを思い出し、今までこの精神でずっとやってきた自分を思い返して大きな失敗はなかったのだからこれからも大丈夫と自分自身を奮い立たせてスタートを切る決心がつきました。
いざスタートしてみて予想以上にハードな生活が続きましたが、軌道に乗せるまではと無我夢中で仕事と家庭を切り盛りしてきました。ところが、ふと気が付くと主人の存在が家庭の中にありませんでした。といっても家出をしたわけではありませんが、仕事にかこつけて帰ってこない日が多くなり子供の面倒も見なくなっていました。話し合いをしようと思っても私の口から出る言葉は「私は毎日雪の日も雨の日も自転車で子供を保育園まで送り迎えして、洗濯・掃除もキチンとやって栄養を考えた食事も作りながら教室も順調に伸ばしているのに、あなたは子供が寝てから帰ってきて土日すら仕事と言いつつ遊びに行って…」と相手を罵倒しさらに追いつめる言葉ばかりでした。もともと技術屋で言葉数の少ない主人はさらに無口になるばかりでした。これで夫婦関係も終わりかなと思っていた時、「じゃ、俺はどうすればいいんだ」「会社やめればいいじゃない」という会話になり、その時突発的に出たことばですが、これはいい案だと思いました。結局主人が管理職にまでなった会社をやめ(家計が苦しくなることは目に見えていましたが、現状を打破するにはこれしかないと思い切りました)、その技術力を生かしてパソコンのメンテナンスやもっと上級の授業を始めました。今では、主人は主人の会社を立ち上げて、隣の部屋を利用してソフト開発の仕事もやっております。
やはり、お互いの苦労が見えるところにいると手伝ってあげようという気持ちも湧いてきますし、それぞれの事業を持つことによって相談したり競争しあったりとパートナーとして良い関係が持てているようです。(近くにいるとつまらないことで喧嘩することも多いのですが。)もう一つ、家庭に関してはルールを作り火曜日と木曜日は主人が保育園にお迎えに行って子供たちと食事をしたり、お風呂に一緒に入ることにしました。「九州男児は家庭のことは何もしない」と言い張っていたのを少しずつ崩しにかかっています。
また、私自信の「教室にゴミ一つ落ちていても恥ずかしい」「子供の保育園に持って行くお弁当入れやハンカチにもちゃんとアイロンをかけなければ気が済まない」「この仕事は最後までやってしまってからご飯の支度をしよう」という完璧主義が「さっき掃除したばかりなのにまた汚して」と子供を怒ることになり「忙しいのだから、ちょっとは子供の面倒みてよ」と主人に文句を言うことになってしまうことに気が付きました。これに気が付いたのは、昨年9月に肺炎で入院し、11月にまた肺炎と椎間板ヘルニアでダウンした時に、手伝いに来てくれた母が「忙しいが口癖になるようでは精神的に余裕がない証拠。病気になるまで自分を追いつめて、損するのは自分だよ」と。それ以来、自分でこのことに気づいたり子供や主人に文句が言いたくなったら「まっ、いいか」と言ってみることにしています。(長年持って来た性格ですから、なかなか思うようには直りませんが…)
仕事と家庭とどちらが崩れても双方の足を引っ張ることになります。かといって両方力んでいるとどこかで無理が生じます。例えば綱引きをしていて何時間も双方が同じように全力で引っ張っていたとしたらどうでしょう?綱が切れて双方が吹っ飛ぶかもしれません。そうでなければどちらかが息も絶え絶えに卒倒してしまうに違いありません。それではどうすれば良いのか?これが正しいのかどうかはわかりませんが、私は仕事と家庭への力の入れ様を時期あるいは時間で、その割合を変えるようにしています。例えば、生徒募集に効果のある時期ならば、少しくらいは子供といる時間を削ってでも仕事に重きを置き、逆に8月や12月といった人が集まりにくい時期には保育園のお迎え時間も早くして一緒に遊ぶ時間を多くしています。また、1週間の中でも主人が子供を見てくれる曜日はまとまった仕事をこなして、土曜日は前の夜から「明日はどこに遊びに行く?」と相談して公園へ行っておにごっご大会とか町内探検隊などイベントを作っては思いっきり遊んでいます。今のところ情緒不安定になったり、保育園で態度がおかしいと言われたことはありませんので、安心しています。しかし、今後どう変化するかはわかりませんので、私がいなくても仕事が回っていくように助けてくれる人を育成しているところです。
今年で、教室を始めてから3年目になりますが、小さなことからコツコツとやってきたことがようやく一つの形になり始めています。今年の年賀状を書く時に、分厚い年賀状の束を見てこれだけの生徒さんや知り合いが増えたことは、何よりの宝物だと感慨深いものがありました。
家庭があり子供がいる女性が、一事業を立ち上げるにはよほど財政的に恵まれていなことには初めから事務所を構えて人を雇ってという会社組織にするわけにはいきません。その点、在宅型スモールオフィスは、アイデアさえあれば小資本で誰でも始められるものだと思います。それを如何に継続し大きくしていくかはその人の腕と努力次第ですが、事業をやる面白さにには変わりありません。私と同じ考えをお持ちの意欲ある女性に、是非お勧めいたします。
馬場 ミカ
少子化時代と言われている.同時に高齢化社会の到来に向けて,社会での女性の活力がもっと必要になる時代とも言われている.働くことと産むことの両方を求められる女性の立場は複雑であると思う.
私は,現在妊娠10ヶ月,あと2週間足らずで出産予定日である.昨年の妊娠をきっかけに在宅での仕事中心に生活を切り替えた.それまで妊娠,出産ということに対して漠然と思っていたことと,実際の妊娠中の生活では様々な発見やギャップがあった.またこんな工夫があればもっと働きやすいのにと感じてきたことについてまとめ,提案してみたいと思う.
会社に勤めていた頃は,出産直前まで働く同僚が周囲にいたこともあり,妊娠してもみんな変らず務めていることだし,ちょっとは大変そうだけど,まあなんとかなるのだろう,と軽い気持ちでいた.しかし実際に自分がその立場に立ってみると,たとえ在宅ワークであっても妊娠中の不安定な体調の中で仕事を続けることがいかに大変なものか実感した.
まず妊娠の各段階によって,仕事の仕方がかなり変ってくるということが発見だった.妊娠初期は,集中力がなく,立っても座っても横になっても気分が悪い.いわゆる「つわり」である.これは妊婦の半数以上が感じるといわれ,症状にも個人差があるという.中には全く食事を受け付けず,入院する人もいるというが,それほど症状のひどくなかった私でもこの期間は大変苦痛だった.
一番危険だと思ったのが立ち眩みである.産婦人科では「血液検査結果に問題はなく,単なる一時的な脳貧血状態だから,めまいがしたら座ってください」と簡単にいわれるのだが,買い物などで30分程度近所を歩いただけで突然目の前が真っ暗になり,とても立っていられずその場にしゃがみこんでしまうことが何度もあった.もしこれが通勤ラッシュの電車のホームだったりしたらどうなっていたか,とぞっとする.この時期は外見的には全く妊娠していることがわからないため,周囲の目は冷たい.たとえば電車などでで気分が悪くなっても席を譲ってもらえるわけでもない.そんな状態は,期間にして約1ヶ月と過ぎてしまえば短いのだが,私はその最中には在宅でもとても仕事に集中することはできなかった.
妊娠初期は一見して妊娠中とは分からないし,つわりを除けば妊婦側の自覚も薄い.それだけに周囲の理解も得られず,知らぬ間に無理をしてしまうのではないだろうか.,しかし4ヶ月頃までは流産などの危険も高く,胎児の基本的な器官や機能が形成される最も大事な時である.この頃の母体の状況は,そのまま胎児の発育に影響する.現在,社会的な妊娠初期における母体と胎児の保護は皆無といって良いと思うが,むしろこの時期にこそ産休などの制度が必要ではないかと実感した.妊娠中期から後期にかけては体調も良くなり,もちろんお腹は目立つようになってくるものの,在宅で都合の良い時に作業をする分には全く問題ない.私の場合はデータ入力とグラフ,表,地図の作成等の仕事を委託され,毎日約8時間コンスタントに行っていた.大まかな作業の流れはこうである.まず電話で依頼があり,全体の作業内容と作業量,納期,納品方法,ファイル形式,報酬などの打ち合わせを行う.これらが確認できたら,入力する元のデータをFAXか郵送で送ってもらい,作業を開始する.具体的な作業の指示や進捗状況の報告は,電話とE-mailで行う.納品は圧縮したファイルをE-mailに添付するか,FDに入れて郵送するという方法である.一度も先方まで出向くことなく,在宅のみで作業が完了したことが大変メリットとして大きかった.しかし全く問題がなかったわけではない.在宅ワークを始めてから実感したのだが,社会の情報リテラシーレベルというのは,思ったほど高くないということだ.私が仕事を一緒に行った会社は,すべて1人1台のパソコンが整備され,外部のネットワークに接続し,個人が専用のE-mailアドレスを持っている.どちらかというと情報化投資を積極的に行っている企業だと言って良いだろう.しかしこれらを使いこなしている人は思ったより少ないのである.まず驚くのはソフトのバージョンアップが遅いということだ,同じ表計算ソフトでも3世代ほど前のものを平気で使っている会社が多い.これでは同じソフトを保有していても,機能やファイル互換が困難になってしまう.同じ部署内でも,関心の高い人は新しいバージョンにアップグレードしているが,そうでない人は何年も前のものをずっと使いつづけている為,結局古いほうのバージョンでしか共同作業ができないという状況である.実際私も相手の会社にあわせてダウンバージョンした状態で作業をせざるを得なかったことが何度もある.高機能なソフトに慣れてしまうと,一昔前の制約の多いソフトで作業するのはかなり面倒なことになる.またE-mailアドレスも一応持っているが,日常的に使っていない人が多い.連絡はEメールでやりましょうというので,進捗状況の報告や確認のメールを送るのだが,全く返事が来ない.仕方なく確認の電話を入れると,E-mailを毎日見る習慣がない,見ても返事を書く習慣がないといわれて,それじゃあコミュニケーションが成立しないではないかと愕然とすることがある.こんな状態であるからE-mailにファイルを添付する,しかも圧縮したファイルを送受信するということになると,全くお手上げという人がほとんどである.大至急ファイルを送ってくれといわれて,Eメールに添付したものの,相手先でファイルを解凍できる人が外出していたため,その人が帰ってくるまで,誰も見ることができなかったこともあった.テレワーカにとって,常に最新のソフトを入れておくことは自分の技術を陳腐化させない為に欠かせないことであるし,Eメールやファイル圧縮及び添付といった技術は生命線ともいえるほど重要なツールである.しかし会社に勤めている人にとっては一応専用のパソコンがあり,E-mailも持ってはいるが,単に会社から支給されただけという意識なのだろうか,情報リテラシーの低い人が多い.今後SOHOなどのテレワークが盛んになっていくと思われるが,このギャップはコラボレーションを行う上で,かなり大きな障害になると思われる.この意識と技術の差を埋めていく必要があるのではないだろうか.
現在,在宅勤務への求人状況はどうなっているのだろうか.あるパソコン通信会社の在宅ワークフォーラムにも毎月4〜50件の求人広告が出ている.どんな仕事内容なのか興味を持って,掲示板をみていると,大きく分けて2つの仕事があることがわかった.まずは突発的な大量の作業への対応である.データ入力など納期が短く,比較的簡単な作業で,賃金も低いことが特徴である.募集対象地域は,募集する会社の近辺の場合と全国の場合があり,前者は入力するデータと納品に直接来られることが条件になっているようだ.対象者の能力や資格を特に指定しないものが多い.
もう一つはプログラム開発やデザイン,専門的な翻訳業務などの特別な資格や能力を必要とする仕事だ.こちらは仕事の期限などは明記されておらず,登録してその都度仕事が発注されるというものである.報酬も一律ではなく,当然その人の能力によって差が出てくる.プログラム開発やデザインの場合は打ち合わせが月に何回か必要という場合が多いが,翻訳は対象地域が全国で,打ち合わせなし,在宅のみというケースが多い.
この2つの他に最近見られる傾向としては,電話によるヘルプデスクやベビーシッターのコーディネータ,HomePageのサーバー管理といった新しい分野の依頼が出てきたことだ.誰か専門の人間を置いておく必要があるが,出勤の必要はなく,何かあった時に対応できれば良いという位置づけの職種がアウトソーシングされているのである.
データ入力などの仕事を一般・短期JOB,プログラミングや翻訳などの仕事を,専門・長期JOB,コーディネートなどの仕事を管理・不定期JOBと仮に定義すると,妊娠初期や授乳期間中には,集中力が要求され,納期の厳しい仕事より管理・不定期JOBが向いていると思われる.妊娠中・後期や育児が少し楽になった頃には,各人の能力に合わせて一般・短期JOB,専門・長期JOBを行うというような,仕事の選び方ができれば良いと思う.
しかしどんなに注意していても,突然のトラブルで仕事が中断するような不測の事態は起こり得る.一人で仕事を請け負う時に感じるのはいつもこの危険性だ.もちろん会社に所属していてもこのようなリスクはあるが,組織で仕事をしていれば,別の担当者を充ててバックアップすることができる.個人にはそれがないため,仕事の量と質,体調の維持といった自己管理は欠かせない.特に妊娠中という特殊な状況では,そのリスクは普通の状態よりも高い.そのための支援手段として考えられるのは,例えば地域のテレワークセンターのような施設にメンバー登録する.通常はそこを通して仕事を斡旋してもらい,報酬の何%かをセンターに保険のような形で支払う.事故や病気で受けた仕事が遂行できない場合のバックアップの組織というわけだ.このようにすれば,仕事を依頼する側もワーカの善意と責任感に頼るという今の形でなく,安心して仕事を発注できるし,個人単位では受けられなかった大口の仕事もセンターが管理することによって複数のワーカが仮想のチームで受注することが可能になる.もう一つ,在宅ワーカにとっての不安は契約形態と報酬である.私の場合も急ぎでとりあえず作業をして,その後でお金の話しということが多い.知人だからできることだが,実際には多くの在宅ワーカが契約なしで口約束だけで仕事をしているのではないだろうか.これもテレワークセンターのような組織が介在することによってある程度解決される.個人のできる範囲で都合の良い時に仕事をする,という自由の反面,トラブルが起きた場合の脆弱さが現在の在宅ワーカの実態ではないだろうか.在宅ワークの互助会,もしくは保険制度を確立するべきと思うのである.次に私が実感したのは,妊娠期間中の孤独感である.会社に勤めていた頃からは,考えられないくらい他人との会話が減少したのである.現在は,地域のコミュニティが崩壊し,妊婦や母親が孤独になりがちであるとも言われている通り,私も近所付き合いはほとんどなく,周囲に知人もいないため,たまに友人や実家と電話やメールで連絡をとる程度である.こんな妊婦や母親を対象としたホームページやパソコン通信などのフォーラムは多く,情報交換の場として有効だと思う.このようなネット上での情報交換に加えて,このような機能があったら良いのにと思うことについて提案する.
まず出産や育児の準備に際して,実に様々な専用のグッズが必要になることに驚いた.寝具ではベビー用布団一式,ベビーベッド,ベビーキャリー,衣類では肌着や産着,おむつやおむつカバー,雑貨では哺乳瓶や,ベビーバス,ベビー用衛生用品などなど,それらは必要ではあるが,短期間しか使えないものが多く,また高価であることが多い.必要最低限のものをそろえるだけでもかなりの出費である.
産婦人科には何種類ものベビー用品カタログやレンタルの案内がある.勿論新規購入よりは安上がりだが,期間が長くなればそれなりの出費になることも分かった.また地域のミニコミ誌のリサイクル欄にはベビー服やベビーカーなどを安く売りますという3行広告が出ていることがあるが,3行ではあまりにも情報が少なすぎて,どのような製品か全く分からない為に連絡するのを躊躇してしまう.近くで開催されるガレージセールやリサイクルショップへ行くという手段もあるが目当てのものがあるかどうかは分からないため,妊娠中や育児期間中にあまりあちこち探し回るというのも考えものだ.
そこで最初に,インターネット上でフリーマーケットが開催されたら良いのにと考えた.基本的な仕組みはこうである.まず売りたい人はその商品の写真とコメント(メーカや型番,使用期間,希望価格)をコーディネーターに送る.デジタルカメラの画像や写真をスキャンし圧縮するなどのツールがあれば加工はより簡単になる.コーディネータは衣類,ベビーカー,ベット,バスなどに分類し,ホームページ上に掲載する.希望者と価格が折り合えば契約成立となる.売り手側は不要品が収入になり,買い手側は希望の商品が安価に入手できるし,商品は写真をみて納得している為,トラブルも起こりにくいはずだ.
ただしレンタル専門業者との違いは,商品の輸送問題である.一般の宅配便などを利用した場合,ベット等の大型家具になるとかなり輸送費がかかるため,このサービスは地域限定ということになるだろう.
そこで次の方策としては,自治体との連携が考えられる.商品の回収と保管を自治体レベルで支援する方法である.粗大ゴミとして出された家具などを自治体がリサイクルショップで販売している例は多い.そのうちベビー用品についてはコーディネータがホームページ上で紹介するということだ.この場合提供者は不要品の無料回収というメリットがあるだけで,収入にはならない.また買い手側はホームパージ上で希望商品を予約し,自治体のリサイクルショップまで商品を取りに行くことが原則となる.この方法であれば,ビジネスという視点より,無駄なゴミや出費を減らすという点からのメリットがあり,また自治体としてもリサイクルショップを設置しても知名度が低い為に市民に活用されないという課題を解決することができる.
自治体の協力が得られ,地域限定というサービスであれば,ぜひ実現して欲しいと思うのがベビーシッターの派遣や買い物の代行などの家事代行サービスである.もちろんこのようなビジネスは既に実現しているが,無認可の団体やシステムが確立していないところへは安心して委託することができない.
現在でもボランティア活動の一環として,高齢者や身障者宅への配食サービスや介護サービスが実現されている自治体が多い.これらもインターネットなどを活用すればより効率的に実施できると思われる.自治体から委託されたボランティア団体であれば,委託する側も安心することができる.またこのようなボランティア活動を行っているメンバーは退職後或いは子供の手が離れた比較的高齢の女性が多いため,パソコンなどの扱いに不慣れなことが多い.そこでボランティア活動に興味はあるが育児期間中で実際の活動に参加できない若い主婦層が,これらボランティア活動のコーディネータを務め,実際に配食や介護サービスを行うメンバーの支援を行ってはどうだろうか.このようにすればメンバーの高齢化や新規参加者の不足を補うことができ,次世代の潜在的なメンバーを確保できる.育児期間中に家事代行サービスを依頼する立場になったとしても,自分或いは同世代が参加している活動の一環であれば安心感があるだろう.これまで妊娠中に感じてきたことを中心にまとめてみたが,何かと不自由の多い妊娠期間,育児期間をデメリットとばかり考えず,在宅だからこそできる仕事を自ら開拓していきたいと思った.これから生まれてくる子供と,毎日ただひたすら向き合って暮らすのでは,きっと息が詰まってしまう.家にいなくてはならない期間を束縛ではなく,逆にメリットとして捉えたいのだ.これまでに在宅ワークの中で得た仕事のノウハウと情報ネットワークを活用して,地域とのつながりを持ちつつ,生活していきたいと思うのである.
平山 喬恵
提案主旨
働く条件や時間が限られてしまい、思うように自分の能力を発揮することができないという悩みを持つ近隣コミュニティの主婦をオーガナイズし、フランチャイズ制の地域密着型パソコン塾を立ち上げ、キッズ・主婦・シニアを対象に情報教育事業を行います。さらに、塾の卒業者による在宅ワークを推進して地域情報化支援を行い、主婦の就業機会を増やし、社会参加のチャンスをつくるとともに、地域の情報化が望まれている分野の情報化を支援していきます。
この教育と地域情報化支援を行うための機能をもつパソコン塾(以下「PCママパソコン塾」と呼ぶ)の運用の核となるツールとして、インターネットをフルに活用していこうと考えます。PCママパソコン塾が、サーバーの役目を持ち、そこからフランチャイズ校へ教材を提供したり、ヘルプディスクを置いたり、塾で作成された生徒の作品を展示したり、仕事の斡旋窓口を置いたりとさまざまな情報を会員に提供していきます。
また幼稚園・保育園・病院などもっともっと情報化が望まれる場所に対して、インターネットを利用して情報化支援をしていきたいと思います。地域の小規模事業所に対しては、ダイレクト販売のノウハウを活かし業務支援を行うとともに、やはりインターネットを活用して既存業務の活性化を図ります。
提案の背景
パソコンを使って主婦をネットワークしたビジネスを立ち上げようと思いついたのは、次女の出産がきっかけでした。長女のときは、ろくに産休も使わず、産後8週で子供を預け働きだしました。仕事も波に乗っていたこともあり、子供がいるにも関わらず以前と同じような働き方をしていました。そのころはまだ、子供のいることで自分が犠牲になりたくないと考えていたので、子供には大変かわいそうなことをしてしまったと後悔しています。
一昨年10月22日次女を出産しました。今回は自分の体が弱っていたこともあり、出産後は6ヶ月ほど育児休業をとりました。6ヶ月間子供と向き合ったことはとても貴重な体験だったと思います。仕事も大事だけれど子育ても今の自分にしかできない重要なことだと思いました。そうなるといままでの仕事のやり方では育児と仕事の両立は困難です。そこで在宅ワークを考えるようになりました。
(株)村井ニットでは、父の代から高級婦人ニット製品をOEMにて製造販売しておりました。現在でもOEMによる製造販売が続いています。しかし全く自社の売上予測ができないという不条理にいつも泣かされ続けてきました。年間売上予測をたてても、問屋からの受注がなければ机上の空論です。いくら営業に出かけても、今年はニットの年じゃないからとか、このブランドは今シーズンで廃ブランドになるとか、価格破壊によるいっそうの値崩し等々小規模であるがためにいろいろと苦い水を飲んできました。何度廃業しようかとも考えましたが、結局自分の力で成果が出せる仕事の方法を探そうと四苦八苦した結果、OEMの仕事を兄に任せ、自社ブランドである「LI・LI」を立ち上げることになりました。
「LI・LI」は、企画から販売までをすべて工場でおこなう自力本願のブランドです。売れるか売れないかは自分たちの責任であるし、自分たちの力で決めることができます。もちろん年間売上から粗利益、アクションプランまですべて自分たちで計画実行する事ができます。若干6年の小さなブランドは、今順調に売上を伸ばし顧客数も1000人となってやっと地に足が着いた状態となりました。糸の買い付けやデザインマップ作成、カタログ作成、顧客管理や在庫管理、販売会の招待状等々パソコンがあればこそできたことだらけです。現在は、インターネットを通じて何か情報を発信できないかと98年春夏コレクションに向けてホームページを作成中です。こういう情報化時代になってやっと小規模事業所でも、やる意欲と方法がわかっていれば、大企業のように資本がなくてもいろいろチャレンジすることができるようになり、チャンスもたくさんあるように思います。身軽さゆえに、いろいろな可能性を求めチャレンジしていきたいと考えています。
仕事に復帰するに当たり当面の課題は、この愛着のある自社ブランドと育児との両立でした。どちらもおろそかにできません。出産後も自宅のマックを使ってぼちぼち仕事をしていましたが、打ち合わせと販売を除けば、なんとか在宅ワークでやっていけそうな気がしました。まだまだ改善しなくてはならない面はありますが、とりあえず在宅ワークを取り入れた仕事が昨年4月より始まりました。
育児休業中は、いろいろな人との出会いがありました。もちろん家にいるのですから、子供を通じて世代が同じおかあさんとあう機会が多くなりました。みんなに話を聞くと仕事をしたいと思っている人が意外と多かったことに気づきました。子供が幼稚園や学校に行った後の時間をどう使ったらいいのかと真剣に悩んでいました。仕事をしたいが、なかなか踏み切れない人が多いようです。理由はさまざまですが、「女も30過ぎるといい条件で働ける場がない」「今まで子育てで数年社会参加していないからいまさら社会復帰する自信がない」「若い子に馬鹿にされないよう何か資格を取らなくては働けない」「子供が小さいためなかなかまとまった時間がとれない」「子供や家庭を犠牲にしてまで働きたくない」などの声がありました。内職するにもこういった住宅街ではコネや知り合いがいないとなかなか回してもらえないそうです。仮にあったとしても暇な時間を埋めてくれるほど継続的ではないようです。
ほとんどの主婦が、結婚あるいは出産迄は働いていた人達ですので、それぞれ自分にあったスキルを身につけています。しかし家に入ってしまったことで、その感やスキルが錆びついてしまっているのです。みんな潜在的には自分の持っている知的好奇心を満足させてくれるような仕事があり、さらに家庭を犠牲にしなくてすむならば、すぐにでも働きたいと思っています。私にとってこの育児休業期間中は、こういう意識をもった主婦仲間が多くいたということを知ることができ、同時にこのもったいない潜在労働力をなんとかして活性化できないかと考えるよい機会でした。
高齢化社会と少子社会により労働者が不足すると騒がれて久しいですが、もしかしたら一番この問題に貢献できるのは主婦ではないでしょうか。結婚・出産・子育てのために、女性労働力のM字曲線の谷にいる私たちが、その谷をぐっと持ち上げることができるのではないでしょうか。その方法は、在宅ワークによる主婦の活性化ではないかと考えます。これからいっそう高齢化が進み、長男長女時代の少子社会ゆえ、子育ての後には介護問題が控えています。そんなとき在宅ワークができたら、手の空いた時に自己実現の場がもて、さらには家計にも少し貢献できるのではないでしょうか。
提案の内容
1.教育事業
現在PCママパソコン塾では、近隣コミュニティのキッズ・主婦・シニア・小規模事業主に的を絞り、それぞれの目的に合ったカリキュラムを構成し、少人数制によるアットホームな地域密着型の情報教育事業を展開しています。教室は、家の1室を使用しており毎週いろいろな方が勉強にやってきます。「パソコンを身につけて在宅ワーカーになりたい」「パソコンを基礎から勉強してパソコン塾の先生になりたい」「インターネットで自分の行動範囲を広げたい」「子供の教育に使いたい」「パソコン音痴のお父さんに教えてあげたい」「パソコンを身につけて自営業の活性化を図りたい」等々目的はさまざまですので、最初のカウンセリングでなにがやりたいのかを聞き、目的にあったコースを設定します。みんな目的がはっきりしているため、ものすごく意欲的です。
この教育事業の持つ大きな目的は、3つあります。まずパソコン塾から在宅ワーカーを育成すること、そしてその塾卒業生が安心して在宅で仕事ができるように支援すること、さらにそれぞれの地域に根を下ろしたパソコン塾をフランチャイズすることです。
インターネット上で主婦の在宅ワーカーを募集するといろいろ問題が生じるとよくいわれています。こちらが想像していたキャリアと応募してきた人のキャリアとに大きなギャップがあったり、とんでもない初歩的なミスをしたり、子供の急病とかで途中で仕事を投げ出してしまったりと主婦の仕事に対する意識の低さがいつも取りざたされるようです。そこでPCママでは、そういった経験を踏まえて自分たちで在宅ワーカーを教育し、その人のレベルにあった仕事を紹介する仕組みをつくっています。また、塾へ通う数ヶ月で仕事への考え方や取り組み方を聞き、信頼関係を築き安心して仕事を任すことができるようにしています。
塾卒業生に対しては、インターネットを使ってヘルプディスクを行い、いつでも知りたいこと聞きたいことをメールしてもらい応対するよう心がけています。このヘルプディスクのデータを集め、ゆくゆくは質問集のライブラリ(FAQ)を作成する予定です。また、個人ではなかなか仕事を受注することが難しいので、PCママが営業活動を行い、受注してきた仕事の斡旋窓口をネット上に設け、卒業生である在宅ワーカーにそれを委託するといったビジネスサポートを行っていきます。
そのほか自宅を利用して同じ様なパソコン塾をやりたいという主婦の方がいれば、塾のフランチャイズ化を支援して行いたいと思っています。イメージは「町の音楽教室」です。自宅にとりあえずパソコンがあり、本人に教える能力があれば自宅の1室を教室に変身させ、あとは生徒さんを口コミで集めていくというものです。フランチャイズした塾に対してPCママでは、運用マニュアルや教材を提供します。また無料体験授業のデモを行ったり、インターネットを使って塾の生徒さんの作品を紹介したり、ヘルプサービスをおこなったり塾経営に対しての支援をしていきます。
よくPC教室を開くために100万からのお金が必要だとか聞きますが、主婦でそこまでお金を出してやろうとする人はなかなかいません。現に自分をブラッシュアップするために、PC教室にきて月1万支払うことですら、元が取れそうでなければ躊躇してやりません。そんな主婦に100万出して教室やりなさいといっても無理な話です。今自分の使っているパソコンを使って1人でも2人でも教えてみたらと話すことの方が、よっぽど信憑性があります。たとえ途中で挫折しても、対して失うものはありません。パソコンはもともとあったものだし、この辺の気軽さが主婦には必要だと思われます。
PCママでは、インターネットを使って以上のような会員向けインターナルwebのほかに、エクスターナルweb(公開用ホームページ)を利用していこうと考えています。塾で作成した子供たちの作品をキッズミュージアムに展示することを考えています。子供達の才能は本当にとどまるところを知らないかのように、毎回毎回すごい作品を作り出してくれるのです。これを世界に向けて発信して各地からその子供達に反応が返ってくれば、インタラクティブな授業も可能となります。子供達はまた目を輝かせて教室にやってくるでしょう。お決まりの型にはまった教育ではない、いろいろな可能性を秘めた創造性あふれる授業ができると思います。いまのところ子供達の反応は上々です。
シニアに対しても、シニアの集いの広場を作ろうと考えています。体の調子が悪かったり、天候のため外出ができなくても、気があった仲間が出会える場があるということはとても楽しみであるといっています。一行でも文字がアップできたら大したものです。それに対する返事がきたら毎日パソコンをあけるのが楽しくなります。
また塾生で何か特技や趣味や公開したいものがある人は、どんどんみんなの広場に参加してもらい才能を発揮していただこうと思っています。ちなみに私個人としては、気学と四柱推命にこっていますのでそこら辺の話をみなさんにしていきたいと構想を練っております。
2.地域の情報化支援
私たちが普段生活していく上で一番気になることに病気が挙げられます。こればかりは、経験と知識がないとどうにもなりません。とくに家族のなかに小さい子供がいたり、高齢者がいたりすると病院との関係は密になります。しかし、ついつい病院へ行き先生の前に座るとなにも言えなくなったり、子供が泣き叫ぶためなにも聞こえなかったりというケースが多々あります。実際私も何度も同じことを経験しています。そこで地域の病院に働きかけ、インターネットのweb上で「子供病気相談」や「喘息・アトピーのあれこれ相談」などといった項目を取り上げ、地域住民の悩みに答えてもらおうと考えています。PCママでは、病院紹介や相談室を盛り込んだホームページの作成を支援して、地域に根ざした病人にやさしい病院のイメージを作りたいと考えています。
幼稚園・保育園では、少子化により園児の獲得が急務となっています。それぞれの園が特色を出し、地域住民にアピールしていく時代となってきました。他の園との差別化戦略が園の将来を決めていくでしょう。そこでPCママでは、幼稚園・保育園がインターネットを利用し、園独自の独創性のあるホームページを作成する事を支援します。ホームページのコンテンツとして、まず園の紹介があげられます。先生は何人いるとか、教室の紹介とか、遊技場の乗り物とか、給食の献立とか、園での生活風景がわかるように紹介していきます。また子供達の作品を展示するミュージアムを作ります。子供達もミュージアムに載るということで、作成意欲が湧きすばらしいものができると思います。そのほか父兄の悩み相談広場を作る予定です。ひとりで悩むことは危険なので、同じ様な悩みを持っている人に気軽に相談できる場をつくることです。孤独な育児や育児ノイローゼを引き起こさないようにするためにも、広く情報公開の場を作りたいと思っています。そのほか幼児教育のカリキュラム作成やコンピュータを使ったエデュテーメント教育を課外授業に取り入れてもらうよう働きかけていくつもりです。
地域の小規模事業所には、(株)村井ニットのノウハウを活かし業務支援を行っていく予定です。業務に合わせたテンプレートの作成や入力代行、いままで手書きでしていた書類や販促ツールの作成などなどカウンセリングをしながらその会社に合わせた業務方法を提案します。また会社紹介や商品紹介を盛り込んだホームページの作成や事業主や社員のコンピュータ教育も合わせて行っていく予定です。業務途中でなにかわからないことが起こればPCママのヘルプディスクで対応するようにしていきます。
本提案のメリット
PCママにとってのメリットは、教育事業と地域情報化支援事業の連動により、着実な事業の成長が期待できるということです。パソコン塾の卒業生がフランチャイズの先生や在宅ワーカーとなるため、仕事の受注時にスキルに合った営業が可能となり無駄がでません。また仕事のトラブルが発生しても、お互い気心が知れているため安心して対応することができます。パソコン塾のフランチャイズを行う人にとってのメリットは、自分をブラッシュアップさせながら、さらに収入を得ることができるということです。また家庭を犠牲にすることなく、空いている時間をうまく利用して仕事をすることができるので肉体的や心理的ストレスがありません。さらに手元にあるパソコンを使うので、教材代や受講料といった最小限の投資ですむので失敗してもそう負担になりません。フランチャイズがだめなら在宅ワーカーという道も開けます。
パソコン塾へ通ってくる主婦にとってのメリットは、今までの空いている時間でスキルアップすることができ、知的好奇心を満足させ、やる気次第では在宅ワーカーへの道が開けるということです。子供達にとってのメリットは、これから義務教育のなかでも必要不可欠となるコンピュータ教育を1人に1台という環境で行うことができ、一足先にインターネットを利用したインタラクティブな教育を享受できます。さらにはその教育のなかから視野を広め、偏らない考え方のできる創造力豊かな人格形成に役立つと思います。シニアにとってのメリットは、毎週教室にやってくるということで生活に張りが出ます。またクラスのなかで競争心がわき脳細胞を活性化してくれます。マウスを動かし同時にモニタを見て頭は違うことを考えなければいけないということが、脳を刺激し呆け防止にも良さそうです。またインターネットを利用して友だちを捜すことも楽しみのひとつになります。
地域の顧客である幼稚園・保育園にとってのメリットは、少子社会の中での他の園との差別化による園児獲得や保護者との信頼関係を深めることができるということです。また地域に根ざした教育環境を構築することができ、園の経営を応援してくれる団体を獲得することができます。医院にとってのメリットは、病気に対する情報公開を行うことで患者から信頼され、より地域社会に根ざした医療環境を構築することができるということです。小規模事業所にとってのメリットは、既存事業の活性化が図れ、無駄な業務から開放されます。また大した投資をしなくても情報化により新規事業への提案が簡単にでき、インターネットを通じて広い視野を持った経営基盤が構築できます。異業種との交流もでき思わぬ新商品が生まれるかもしれません。諦めていたビジネスチャンスがたくさん見つけられます。このようにPCママが考えている教育事業や地域情報化支援事業は、さまざまなメリットを生み出し、地域の情報環境をグラスルーツから変えていこうという動きです。教育事業の方はすでにスタートして軌道に乗っています。これからは地域情報化のための支援を行う事業所や園や病院にアプローチして営業をかけるステージです。先はまだ見えませんが、インターネットの可能性をみなさんに十分理解していただき、楽しく開かれた地域情報環境づくりができるよう在宅ワーカーとともにがんばっていきたいと考えます。
三宅 一乃
私がこれから始めたい「在宅型スモールビジネス」は、インターネットホームページ及びミニコミ誌発行により、子供を持つ家庭のための地域情報を提供することである。名称は「はみんぐファミリー情報」―岐阜地区・西濃地区のkids&ファミリー情報誌―とし、具体的には以下のような業務を予定している。
■ホームページにより地域情報を発信する。(月1度更新し月刊のイベント情報や新情報を加える)
■インターネットを利用しない人にホームページのトピックや新着情報を印刷したミニコミ誌を発行し有料で配布する。
■ホームページ及びミニコミ誌に地域の店舗などの広告を掲載する。
情報収集の方法は、主婦スタッフの近所のお店や子供の習い事、知り会いから聞いたことのような具体的でごく身近な情報を収集する。また読者からの投稿という形で同様の情報を収集し、まとめて発信する。
地域は 岐阜市周辺と西濃地区で読者対象者は0才から中学生までの子供のいる母親または父親とする。
ホームページに載せる情報は次のような項目を予定している。
ホームページINDEX:
■トピックス(読者による投稿やテーマ討論など)
■新着情報(以下の各項目)
■月刊イベント情報(公演、公開講座、催しなど)
<街角情報>
■遊び1.身近な公園編2.休日おでかけ編3.スキー 4.お宿5.ショッピング(子供服、大人服、雑貨、おもちゃ、手作り)6.レストラン(ランチ情報)
■病院(産婦人科、内科、小児科、皮膚科、耳鼻科、眼科)
■美容院
■公共施設情報(図書館、児童センター、博物館等)
■幼稚園、保育園、子供のおけいこ
■ママのおけいこ情報
■その他
<個人情報>
■サークル情報
育児サークル、スポーツサークル、その他サークル情報
■メールフレンド募集
■リサイクル情報
なお上記indexの内容をミニコミ誌として発行する。一時期パソコンが他の家電製品と同じようにどの家庭にも普及するのではと考えられていたが、結局必要としていない人はパソコンは持たないということがわかってきた。そこで、このビジネスをホームページとミニコミ誌の2つのスタイルで展開していこうと考えている。
運営資金については、ホームページとミニコミ誌に地域の商店やサービス業の広告を掲載し、その掲載料を得る。友達募集、リサイクル情報、サークルメンバー募集などの個人情報は掲載料を徴収する。ミニコミ誌には郵送費、印刷費などの実費に事務的な手数料などを加算した購読料を徴収する。以上の3つの方法を検討している。
それからスタッフへの賃金の支払いに加え、個人情報以外の情報(街角情報と呼ぶ)を採用させて頂いた読者には謝礼を支払うつもりである。謝礼を出す事でより良質な情報が収集できるとの考えに基づいたものである。またホームページとミニコミ誌の製作は、数人の主婦スタッフに手伝ってもらおうと考えている。現在想定している一連の仕事の工程は次の通りである。
・対象地域である岐阜市とその周辺部をさらにいくつかの地域に分け(岐阜市北部、南部、周辺の○○町など)1地域に1人のスタッフを置く。
・情報収集
自分の地域の行きつけのお店などの情報、友人、知人からの情報を集める。狭い地域内なので個人できめ細かい情報収集ができる利点があると考えられる。
・事務局にホームページを通じで届いたりあるいは郵便で届いた読者からの情報を地域別に分け、FAXやE-Mailで各スタッフに送る。スタッフは読者からの情報と各自で収集した情報を入力、編集作業をしてE-Mailで事務局へ送る。それらをまとめ、ミニコミ作成、ホームページを公開。情報には、写真や地図イラストなども含まれる。スタッフのごく近所の情報を提供してもらうため、写真撮影や取材にはさほどの困難は生じないであろう。また、自宅でミニコミ誌の郵送作業をするスタッフも必要ならば確保したいと思う。
さらにこの業務は個人情報を取り扱うため慎重な姿勢が必要だ。個人情報の管理には充分注意していきたい。例えば個人の連絡先を掲載せず、事務局が窓口となって手紙等を受け取り転送などのシステムも確立したい。街角情報についても住所や電話番号など客観的な事実に誤りがないように確認作業を徹底するようスタッフに促したい。
情報の提供はいわば月刊誌と同じであり、以下月に一度のホームページの更新と新着情報のミニコミによる発行となるが、それらの情報が半年から1年たまったらまとめて印刷、発行したいと考えている。また、読者の要望に応じて項目を増やす(例えば福祉情報)など柔軟な対応を目指し、より地域住民に役立つ情報を常に発信できるよう心掛けたい。さらには、イベントの企画(託児付き講演会など)や技術を活かし、ホームページ作成を請け負うなど業務内容を広げていきたいと考えている。
さて、子供を持つ家庭向けの情報提供というビジネスを考えたのは、おそらく私自身が小3と小1の二人の子供を持つ母親という立場にあるからだろう。私が子供だった頃に比べ現在の子育て事情は、急速に変化しているように思われる。少子化にならび核家族化が進み、孤独な育児をしている母親が増加している。しかし、その一方では育児情報誌が相次いで創刊され、情報過多の状況にあり、ともすれば母親が情報に流され、戸惑い、時には育児ノイローゼになることもある。その一例が、「公園デビュー」である。はじめて子供を公園に連れて行く時の服装から立ち振舞い、時間帯など事細かいマニュアルが提供される。それを鵜呑みにした母親が、たかが公園に行くくらいで精神的に大変疲れてしまうというおかしな現象が起きている。公園での付き合い方などというものは、それぞれの地域や環境やさらに言えばそれぞれの母親や子供の性格によっても違ってくるはすである。それなのに型通りのマニュアルを強制するのは全く実情に合っていない。全国レベルの育児情報誌が提供する情報よりもお母さんたちに必要な情報とはなにか。それはもっと地域に密着した情報ではないのかという考えが、自分の中で次第に大きくなっていった。例えば、子供服の安いお店、子供連れでも気兼ねしないで利用できる飲食店、子供の習い事など入手してすぐに活用できる情報だ。
また、先に上げた公園デビューを無事果たし、母親同士の交流ができる人はよいが、子供と2人きりで過ごす人もかなり多いのではないかと思う。私自身も子供が小さい頃、屋外で遊んでいる親子を求めてベビーカーを押して公園めぐりをしてみたが、ほとんど出会えず仕舞だった。それなのに集団検診や予防接種の日にはどこにこんなたくさんの母子がいたんだろうと不思議に思った程、多くの母親と子供が集まったという経験がある。人が集らないと、情報も集まらず、人が交流しないと情報も流布しない。だから、ホームページやミニコミ誌という手段で情報交換の場を提供することは、大変有意義なことだと考えている。読者自身から寄せられた情報を提供するので、その情報が読者の経験に基づいている場合が多い。「今まで知らなかったけど実は同じ地域に同じ立場の人がたくさんいる」とわかるだけでも精神的に支えられるのではないかと思う。そういう点を重視して、友達募集やサークルメンバー募集などの個人情報も多く取り入れていきたいと考えてい
以上、少子化と核家族化について述べてきたが、それに加え、ライフスタイルの変化や価値観の多様化というものも育児環境に大きな影響を与えているのではないかと考えている。乳幼児期の子供と二人きりの孤独な生活が終わると、入園、入学を機にパートあるいはフルタイムで働く。そして地域社会との関りのないまま老年期を迎え、再び孤独になるというライフスタイルが増えつつあると思う。価値観の多様化は、専業主婦と職業を持つ主婦、子供を幼稚園に入れている人と保育園にいれている人などいくつかの分断を引き起こしている。母親達は例えば、同じ保育園、幼稚園、職場、サークルなどごく限られた小さなグループの一員となり、それぞれのグループは互いに交流がなく、狭く情報の少ない中で生活している。場合によっては他のグループを批判するなどかなり偏った見方をすることもある。より広い視野に立ったなおかつ偏りのない情報を得ることが必要ではないかと最近痛切に感じている。その方が選択枝も増え、豊かな気持ちになっていくだろう。人と人との繋がりのきっかけとしてもこのビジネスは有効なのではないかと考える。
それから、中央発ではなく極めて限られた地域から情報を発信することは、地域社会での生活を楽しむために役立つのではないかと思う。レジャー情報を例にとってみると、大手のテーマパークの紹介は確かに役立つ情報である。しかし、遠くまでお金をかけて出かけなくても県内であるいは地域内で十分楽しめる場所や方法があるはずである。それを知らないというのは損な事ではないか。私は1997年3月に母親グループ「はみんぐ家族」の中心となって「子どもとでかける岐阜あそび場ガイド」という本を出版した。東京の出版社から頂いたお話だったが、岐阜県内のみのガイドブックを作ることができるほど、「あそび場」があるのだろうかと当初は戸惑った。しかし、メジャーな場所ばかりでなく穴場的な所も紹介するという出版社の趣旨を知って、リストアップを始めてみたら、意外にも多くの「あそび場」が見つかって驚いた。長年岐阜に住んでいながら知らなかった楽しみ方を見付けられて本当に貴重な体験をした。その経験を生かして地域のみなさんに喜んでもらえるような情報を発信したいと思う。
冒頭のホームページINDEXからわかるとおり、「はみんぐファミリー」の発信する情報は地域限定とはいえ、多岐に渡っている。岐阜市周辺地域には、ファミリーむけの総合的な地域情報誌がないのでそれらを網羅する総合的な情報誌を作ることを目標とするつもりである。特に子供を持つ主婦層は、現在、新聞の地域欄や独身世代向けレジャーやグルメ情報中心のタウン誌や行政からの広報誌、そのほか様々な情報を書店や図書館や行政機関でそれぞれ得なければならない。そのためにはかなりの時間や手間がかかってしまう。
また、最近では、全国規模の育児情報誌やリクルートの個人情報誌には、大変多くの個人情報(メールフレンド募集やサークルメンバー募集など)が掲載されているが、そのうち岐阜市周辺に絞ってみるとその情報量はわずかになってしまう。自分が育児サークルのメンバー募集で苦労した経験も踏まえ、もっと密度の濃い地域や個人情報を発信して皆さんに役に立ちたいという気持ちがある。それに、情報は受け取るばかりででなく発信するのものである。その楽しさを提供する場にしていきたいと思う。
以上このビジネスの社会的意義という観点に立って述べてきたが、次に「SOHO」を取り入れることによる利点について述べていきたい。まず、SOHOの『ホームオフィス』についてだが、「はみんぐファミリー」のスタッフは、すべて在宅で仕事をしてもらうつもりである。この事業の対象者が子供を持つ家庭であるので、スタッフは子供を持つ主婦の方が適切だと考えている。一口に主婦といっても子供の年齢によって一日のうちの活動の時間帯が違ってくる場合がある。また、PTAその他、様々な雑用もあり、スタッフが一同に顔をそろえるのは難しい。その点はFAXやE-Mailを用いて連絡や原稿などのやり取りをすれば、スムーズに仕事が進んでいくと思う。スタッフそれぞれが仕事をする時間を自由に設定できることが在宅の最大のメリットである。
SOHOという言葉が使われ始めて久しいが、大都市部ではともかく、岐阜のような地方都市では、実際にSOHOというスタイルで働いている人はまだまだ少ないのが現状だ。会社を退職か休職した人が元の職場の仕事を在宅でしているといったケースはあるが、新規に始めようとするとなかなか難しいようだ。この情報誌のスタッフをお願いすることでSOHOスタイルの仕事を供給することができるのだ。
もう一方の『スモールオフィス』についてだが、SOHOを取り入れることにより、経費の節減ができるという利点があるのは周知の通りである。前述の「あそび場ガイド」の出版の経験から、書籍の出版はなにかに付けて非常に経費がかかる事がわかった。1つの本を製作するには執筆者に原稿料を払うことになる。そして執筆者は取材や資料集めなどの経費を必要とする。他にも地図を作成する業者、編集を担当する業者、そして印刷製本する業者、そして書店など多くの業者が関わり、一冊の本の出版、販売には多くの費用を必要とするわけである。私が考えている「ハミングファミリー情報」というビジネスを仮に自費出版という形を取ると、おそらく書店や印刷の業者に支払わねばならずある程度の資金が必要となってくる。また、販売ルートの確保などにも時間を必要とするだろう。それが、ホームページでの公開であれば、かなりの経費節減になるはずだ。また、スタッフに支払う費用についても交通費は必要がなく、拘束時間も短縮されるのでコストを押さえることができる。スタッフはそれぞれの近所の情報を集めたり、知人からの情報を集めることで取材などにかかる費用をおさえることもできる。それらの経費節減分をミニコミ誌として印刷、郵送する分の価格に反映することを考えている。また、掲載広告の価格を安く抑えたり、読者から寄せられた情報に対し、謝礼を出すことも考えている。
よくSOHOに対する批判として、機械に向かっているばかりでは人と人との関係が希薄になるのではないかというものがある。確かに職場で毎日顔を会わせ、時には新年会や忘年会といった会を催す必要があると考えればSOHOには無理なことである。しかし、インターネットを通じ、手軽かつ柔軟に人脈を広げられることは、多くの人が経験済みだろう。スタッフ同士の親睦という点は、スタッフのメールアドレスを知らせあってやりとりをしたり、チャットルームを導入してリアルタイム会議を開くことを検討している。
SOHOはいうまでもなく、パソコンが無ければ成り立たない形式である。パソコンのトラブルが発生すれば、業務はたちまち停止してしまう。それを防ぐためには、月並ではあるが、やはり常にバックアップを取れるシステムにすることが大切だ。予備のマシーンも用意できれば越したことはないだろう。ホームページ公開あるいはミニコミ誌を発行して、読者に読んでもらうのだから、デザインや技術にも重点を置かなければならない。その技術を得るために自分自身が講座を受けたり、技量のあるスタッフを登用したい。情報をよりわかりやすく見やすくするためには、写真や地図、イラストなども必要なので、スキャナーやデジタルカメラ、フィルムスキャナー各種のドローソフトも備えたいと考えている。
パソコンブームも終息の感があり、どの家庭もパソコンを持つわけではない。その点を考慮してこの事業はホームページとミニコミ誌という2つの形態で展開していき、パソコン利用者と非利用者の橋渡し的役割を果たしていく事は既に記したとおりである。しかし、インターネットをはじめパソコンは情報の宝庫であり、より多く人に利用してほしいという気持ちがある。阪神大震災の際のいちはやい被災者の無事の確認やボランティア集めにパソコンによる情報網が、活躍したことは記憶に新しい。個人でパソコンを持たない人のために行政側がサポートすることが必要ではないのかと感じている。
岐阜県や県内の市町村ではようやくホームページを作って市民に情報提供サービスをはじめたばかりだ。しかし、ただホームページを作り、見てくださいと言うだけで、あまりメンテナンスをしていないように感じる。終わったイベント情報を載せたままにしていたり、新しい情報を追加していないものも多い。また、一方的な情報提供のみで情報を受け取る体勢は残念ながら整っていない。インターネットサービスには双方性も重要なので早急な改善を望みたい。
また、公民館、図書館など公共機関でパソコンを置きインターネットが見られますと歌っているところが多いが、利用している人をあまり見掛けない。普段インターネットをする人はわざわざ出かけていかなくてもパソコンを持っていて家で自由にできる人ばかりだ。従って多くはパソコンなんて触ったことがない人が利用するわけだから、わかりやすいマニュアルを整備するか、説明員を置くなどしてソフト面を充実し、気軽に利用できるようにしてほしい。
そして、行政機関内でのネットワークの整備も望まれるところである。各課やまたその出先機関がネットワークで結ばれ、様々な業務をオンラインで行えば、時間と経費の節約になるのは言うまでもない。行政改革の一つの重要な役割を果たすのではないかと考えている。そしてひいてはそのネットワークが民間との関係にも導入されていくことになる。そのような整備が整えば、地域社会により一層のパソコンネットワークが浸透していくことだろう。それは、まだ一般的でない地方都市でのSOHOという労働形態の定着させ、SOHOの雇用が増えていくのではないかという大きな期待を持っている。
藻谷 ゆかり
副題:私のSOHO(スマート・オフィス・ヒューマン・オフィス)を目指して
1.はじめに
私は、昨年3月に世界最大企業であるアメリカの自動車メーカー、ゼネラルモーターズ(GM)のマネージャーを辞め、翌4月に起業して最高級インド紅茶を輸入、インターネットで販売する事業を開始した。GMに勤務中はまさに巨艦に乗っている感じであったが、現在は本当に小舟でビジネスという大海をさ迷う「楽しさ」も「つらさ」も両方味わっている最中である。私生活の面では、私には5歳の息子と4歳の娘がいる。子供たちは、もうある程度大きくなったので、生活面では手がかからなくなってきているが、親がもっとそばにいて遊んで欲しいと考えているし、その気持ちを口に出す年齢になっている。私は、働き続けながらも、どのようにして子供たちとの時間を確保して、かつ自分が満足できるキャリア・アップができるのか、ここ数年ずっと悩んできた。その結論として、起業しSOHOするようになったのである。このエッセイでは、大組織での勤務経験を踏まえて、私がどのようなSOHOを目指しているのか、また実際にどのようにSOHOを運営やインターネットの利用を行っているかを具体的に述べたい。そしてこのエッセイが、仕事と育児の両立に悩んでいる女性や、SOHO型起業を目指す女性の参考になれば幸甚である。
2.私のSOHOの定義
一般的なSOHOの定義は、スモール・オフィス・ホーム・オフィスの略であり、自宅でできるような小資本のビジネスを行うということである。アメリカではSOHOなど会社以外の場所で働く人口は約710万人といわれ、前年比9.2%の伸びである。一方日本では、週一回程度の部分的なSOHO型も含めて、まだ十分の一程度の70万人弱といわれている。人口の絶対数や国土面積の差以外に、こうした日米間でのSOHO浸透度の差は、以下のような理由によると考えられる。
・社会全体としてアメリカの方が個人主義の傾向が強く、個人の資格で仕事をしやすいこと
・パソコンなどの通信手段が日本よりも普及率が高いこと
・90年代初めの不況期に、アメリカではリストラクチャリング(事業の再編成)の一環として人員の
流動化が進み、さらに現在の好況期においても、組織外への業務アウトソーシングや従業員の自宅
勤務を推進することが、一般的な経営手法として定着したこと
一方、日本においては現在までのところ、SOHOは「主に子育て期にある働く女性が、自宅でも仕事ができるようにする。」という文脈で取り上げられることが多く、またその仕事内容も、大企業の下請け作業ということが多いように思われる。ここで、私が提言したいSOHOの経営理念とは、「スマート・オフィス・ヒューマン・オフィス」ということであり、大きな初期投資などの固定費を抑えてスマート(賢い)経営をし、かつ家庭生活や自分の健康を重視したヒューマン(人間的な)経営を行うことを経営理念としている。また、実際の仕事も大企業の下請け仕事ではなく、大資本がなかなか参入できないニッチ市場を、コストが比較的かからないインターネットを利用して開拓していくという方向性を持ちながら進めていくべきだと考えている。私の目指す、「スマート・オフィス・ヒューマン・オフィス」の具体的な説明を以下に述べる。まず、固定費や大きな初期投資を抑えスマート(賢い)経営をする必要性についてであるが、もちろん個人が小資本で始めることにおいて、これは経営目標というよりどうしもそうならざるを得ない制約である。しかしながら、これを制約として否定的に考えるよりも、どのようにしたら固定費があまりかからないビジネスを効率よく展開できるのかというのを、追求する姿勢が重要であると考えている。固定費を抑えることには、次のような利点がある。第一に、事業が順調に立ち上がっていった後も、不況などの外部的な理由により一時的に売上が落ち込むことはある。そうした際に、いかに固定費が抑えられているかによって、そうした下降局面に強くなるのである。第二に、もともと大きな投資を必要とするようなビジネスに参入することは、最初のうち独自性や新奇性でうまくいったとしても、そのうち大資本の参入を招き、最終的には規模の大きさによって、まったく太刀打ちできなくなってしまうのである。そのような事態を将来招かないように、SOHO経営者は資本力に頼らないビジネスを最初から志向することが肝要である。次に、ヒューマン(人間的な)経営をすることについてだが、大きな組織を効率的に運営していく上で、どうしても人間的でない部分を生んでしまうのが実状である。そもそも組織というものは一人一人の人間で構成されているはずなのに、多くの人間をより効率的にコントロールすることを目的とすると、どうしても個々の事情を尊重することが難しくなってしまう。また、現在の組織の問題点は、過去に男性が作った論理で構成されているということである。そのような状態を無理にがんばって、「女性でもやれる」ということを実践して下さる女性達はありがたいし、後進の女性にも道を拓くことになるだろう。しかしながら私は、ある女性が無理をしてでも組織の既存の論理に迎合して仕事をしていくことにより、かえって組織にとっての「都合のいい例外」を作ってしまうことにはなるまいかと懸念している。私は組織の論理と自分の家庭生活や価値観が相容れないことを体験し、このギャップを個人的に我慢しないことを選択した。たとえ収入が下がったり事業が失敗するリスクがあっても、自分の居心地のいい職場を自分で確保することを目指して、組織を離れて仕事をする道を選択したのである。また、ベンチャー・ビジネスとSOHOの違いについて、私なりの見解を簡単に述べたい。ベンチャー・ビジネスは、文字どおり冒険であり、小さな資本で始めても新しく大きな市場を生み出していくようなタイプの起業である。ベンチャービジネスは、場合によっては他社から出資や融資を受けなければならない点も、よりリスクが高くなる一因である。これに対して、SOHOの場合は、あまり固定費がかからないでもなんとかやれる点や、いままで組織内でやっていた仕事を個人の立場で受託するというフリーランス型の起業である点が特徴であるといえよう。言い換えれば、ベンチャービジネスはあくまでハイリスク・ハイリターンであるが、SOHOの場合は一般的にローリスク・ローリターンにとどまるのである。一方で私は、SOHOでこそスマートでヒューマンな運営ができるが、ベンチャー・ビジネスとなれば前述した出資者への責任などにより、なかなか人間的にはなれない部分が生じてしまうと考えている。私の場合は、あくまでSOHO型であるが、実際の仕事内容が今までにやったことがない部分は「ベンチャー」である。つまり、紅茶を販売した経験がないにもかかわらず、輸入元となって一定規模の買い付けを行ったことには、かなりのリスクがあった。しかしながら、私は他人の出資を受けず、かつ有限会社としての資本金の範囲内でのみ紅茶の買い付けを行っており、一般的なベンチャー・ビジネスとはリスクや株主への責任の面で異なると考えている。
3.実際の運営方法
以下、実際にどのやって私流SOHO(スマート・オフィス・ヒューマン・オフィス)を運営しているかを述べる。
・ベンチャー・サポート・センターへの入居
現在、私は千葉市の海浜幕張駅前にある、ベンチャー・サポート・センターに入居している。ここでは、設立間もない法人に対して、3年を限度として敷金・礼金なしの格安賃料で事業スペースを提供している。場所が幕張メッセ横の超高層ビルの一角であるが、郵便局やレストランまた外資系の銀行も入居しているので、オフィス環境が効率的かつ快適である。資金面で固定費が少ないことがここに入居を決心する主な理由ではあったが、きちんとしたオフィスビルに入居していることで、社会的な信用につながる面もある。特に通信販売をやって全国の方々からご注文いただくことを目標にしているので、信頼を得るためにもビジネス・アドレスは重要である。もちろん、このベンチャー・サポート・センターに入居している他の会社の方々からも、いろいろご助言をいただく機会もあり、ビジネスの上で助けていただくこともあるし、また一人でビジネスをやっていく孤独感も薄れるというメリットがある。また個人的にも、今のオフィスは自宅から電車と徒歩で20分程度のところなので、通勤時間が短く、疲れにくいので大変にラッキーである。以前企業に勤めていたころは、オフィスまでの通勤が一時間かかり、その分家庭生活が犠牲になったり、上司から頼まれていた仕事を断って子供達のお迎えをしたりしていた。実は、まだ企業に勤めていたころに、「自宅に近い海浜幕張あたりに職はないかしら。」ということを夢として、家族や友人に話していたりしていた。その当時は、「そうなればいいな」というぼんやりとした気持ちであったが、数年後に縁あって、海浜幕張にオフィスが持てるという夢がかなっている。すべての憧れや夢が叶うわけではないが、「ああ、こんな所で仕事ができたらいいな」とか「こんなことをやってみたい」と心から思ったことは、私の例のように実現することもあるので、自分の中で夢を描くことは大切で、それなしにはその夢が叶うことなど、ありえないのであると考えている。
・インターネットのビジネスの運営理念
SOHOの効率的な運営にインターネットの存在は欠かすことができないが、実際に私がどのようにインターネットを活用し、スマートな経営を行っているかを以下説明する。まず、紅茶の輸入についてインドにいるパートナーとの連絡に電子メールを使って、通信費を大幅に節約している。国際電話はコミュニケートできる情報量が限られているし、言った言わないの証拠が残らないので、ほとんど使っていない。国際電話でFAXを送るにしても、数ページにわたる場合にはかなりの金額となってしまう。電子メールであれば、国内料金でプロバイダーのポイントにアクセスするだけなので、非常に安い。かつ、文書の保存にも便利で、相手に着いたかどうかも確認できる点が優れている。また、ホームページを開設し、弊社の商品の説明や写真をいろいろな方に見ていただいている。現在、カラー印刷なども安くなっているが、きれいなカタログを印刷して顧客となっていただく可能性のある方々に配る、もしくは郵送するということは大変なコストがかかる。また、そういう手法の場合、興味がない方もカバーしなければならないので、無駄が多い。これに対して、インターネット上のホームページは基本的には紅茶に興味がある方に見ていただいているので、一般的なチラシ配布より成約率は高い。また広告費として、ドメイン取得費用と維持費がかかるだけなので、より多くの方に見ていただくことによる変動費はかからないのである。(よっぽどアクセス数が増えた場合には、サーバーの管理費等がかかるであろうが)ここで、SOHOの場合には、「ホームページは自分で作らなければならない」ということを強調したい。なによりも、作成にかかるコストを削減しなければならないし、更新するたびに外注していたのでは、必要な更新もできなくなる。最初から立派なものができなくても、自分なりに常にデザイン・文章のレベルアップを心がけていけば良い。この点がしっかりと実行できるかできないかが、インターネット販売者としては成功できるかできないかの分かれ目であると自分自身、肝に銘じている。さて、ここでインターネット通販の一般的な成功例から、なぜ私が最高級紅茶の通信販売を選んだかを説明する。アメリカでのインターネット通販は、パソコン関係27%、旅行24%書籍・CD16%を占めており、これらが勝組ということになっている。一般的な通販でよく売れるのは、アメリカの場合はファッション関係とされているので、同じ通信販売といっても両者はかなり異なる販売ルートなのである。こうしたアメリカでのインターネット通販の勝組に共通すること(成功の鍵)は以下のようなことである。
1.品質が信頼できる
2.インターネット上の取り引きの方が利便性があって、価格や取り引きコストが安く、
かつ手間がかからない
3.専門性が強く商品で、ホームページ上で多品種の検索が可能、かつ在庫の有無がすぐにわかる
4.趣味のものであって、生活必需品ではない
私が販売している最高級紅茶は、インターネットで成功している商品の特徴とかなりマッチしている。私は、クオリティーシーズンといわれる時期に取れた紅茶を、茶園からのままブレンドせずに空輸して密閉アルミパック袋に詰め、100g単位から販売している。この商品は、一部の紅茶マニア向けのものであったが、できるだけ多くの方々に買っていただけるように、リーズナブルな価格設定にした。品質の面では、経営のしっかりした茶園の最高等級のものだけに限って取り扱っているので、弊社のブランド力ではなく、茶園のブランド力に依っている。利便性とリーズナブルな価格については、同じ茶園の同じ等級のものが、店舗を持たないことによりインターネット上で半額ちかい値段で購入できるようにしている。実際には、こうした最高級紅茶は紅茶専門店でしか手に入らないので、消費者にとっては、電車賃をかけて買いにいくことよりも電話・FAXもしくは電子メールで注文し、送料を払った方が時間と手間がかからない。また、缶入りにせずアルミパック袋を使用しているので、郵送も定型外の安い料金が適用され、消費者の取引きコストが通常の紅茶缶よりも更に安くなるようにしている。次に、上記の成功の鍵を踏まえて、自分のホームページ作成で心がけていることを述べる。第一に、厳選した商品ライン(実際には4種類の紅茶)で、かえって専門性を訴えるようにしている。限られた商品ラインを逆手にとって、こだわった商品であることを強調するのである。また、オリジナルなパッケージを取り入れ、自社のブランドをはずして、ブライダルギフトの購入者などが、自分の紅茶としてギフトに使えるような工夫をしている。さらに、メールで注文をしてきたお客様に対して、即日受注のお知らせをし、迅速な配送を心がけている。これは、インターネット・ユーザーは、メールでの即応性になれていて、一刻も早く返事が欲しがるものである。また、インターネットでの買い物も、あくまで実際での買い物を同じ体験なので、お客様が買うと決めたらすぐにお届けするということも、必要とされるのである。最後に、よく言われているがOne
to One Marketingでユーザーのこだわりを大切にするようにしている。具体的には、お客様の質問には丁寧に、かつ迅速にお答えするということである。
4.今後の課題
今後の課題としては、まず第一に収益面での改善を目標として挙げたい。起業してからまだ一年たっておらず収益面ではまだまだの状態でそれでもなんとかやってけているのは、自分の人件費を最低限にしているからである。もし人を雇っているとすると完全に大赤字という状態になってしまうであろう。したがって、自分の人件費を人並みに払えるようなの規模の売上を確保することであるまた、その売上を増やす方策として、インターネットのホームページをより魅力的なものにする、月刊誌と同じような感覚で、お客様に読んでいただけるようにする、注文方法をより簡易にすることなどを計画している。また内容や商品を更新することを常に怠らないことを目標としている。
5.おわりに
このエッセイの締めくくりとして、起業して良かったことをまとめる。起業して一番良かったことは、自分にとっての居心地の良い職場を確保したことである。起業にはもちろんリスクが伴うが、組織にいて幸福になれないリスク(上司が仕事と家庭の両立に理解がないとか、自分としてはがんばって仕事をしていても経営陣の不祥事がきっかけで会社が倒産するとか)は、避けられないものである。私の選択としては、前者のリスクをとって良かったと考えている。また、最近は「働くこと」と「働かされていること」の違いについても考えさせられる。どんなに収入があっても「働かさせている」状態ではストレスが多い生活になってしまう。逆に、たとえ収入は少なくても自分が能動的に「働く」ことで、満足度も高いしストレスもあまり感じなくて済むということを実感している。最後に、この仕事を始めてから、仕事のことを子供に説明できるようになったことがメリットとして挙げられる。大企業の歯車の一部であったころ、なぜ残業なのか、なぜ週末に会議があるのか、子供たちには説明することができなかった。しかし、自分で仕事をするようになってからは、子供にも十分にわかってもらえるようになった。もちろん休日には子供を職場に連れてきて、どんな商品を売っているのか、どれだけの在庫を抱えているのかを見せるようにしている。子供にとっても、親が起業したことによるメリット・デメリットはあると思うが、働くことの厳しさと同時に喜びをいつかわかってもらえるのではないかと期待している。
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